2004年06月29日
中国、アクリロニトリルの揚子江流域輸送禁止の影響
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

 既報の通り、中国政府は6月1日から揚子江流域でのアクリロニトリルの船での輸送を禁止した。合わせてアクリロニトリルの陸上輸送についてもトン当たり10ドルの課徴金を課した。

 台湾の奇美実業の追放問題とタイミングがあったが、中国政府の目的は環境保護の強化と輸送の安全で、アクリロニトリルが危険物であることから、漏れた場合の水中生物への影響を懸念してのもの。

 中国交通部(Ministry of Communication)は2002年に内陸河川での危険化学品輸送禁止の通達を出しており、本年5月にも危険化学品の規制に関する新しい通達を出している。アクリロニトリルの扱いのほか、トラックの過積載禁止も決めており、これも輸送費アップにつながることとなる。

 危険物の海上輸送については、国連の勧告に基づく国際バルクケミカルコードに基づき規制が行われるが、国内河川での規制はそれぞれの国に任されている。

 今回のアクリロニトリルの河川輸送禁止で、直接影響を受けるのは次の海外からの進出各社。

Nantex Industry(台湾) 江蘇省鎮江  NBR  16,000トン/年
奇美実業(台湾) 同上       ABS 250,000トン/年(500,000トン/年への増設計画)
國喬石化(台湾) 同上       ABS 180,000トン/年
新湖(常州)石化(韓国) 江蘇省常州 ABS  50,000トン/年

 奇美実業はアクリロニトリルを上海から揚子江、長江運河を通り鎮江まで600km輸送している。同社では日本などから海運で調達しているアクリロニトリルの輸送コストは、1トン当たり30~40米ドルだが、陸運に切り替えた場合、輸送コストは同60~80米ドルと一挙に倍増するとしている。

 奇美実業では、この規制が同社を狙った政治的なものではないとし、またこれにより同社が中国での生産を停止するのではないかとの憶測を否定、今後は荷揚げ港を変更して陸上輸送費を下げる等の検討を行うとともに、コストアップ分は値上げによって対応するとしている。