2007年12月18日 |
クレハ、米国でポリグリコール酸樹脂「PGA」事業化 |
デュポンのBelleプラント内に年産4000トン工場建設 |
【カテゴリー】:経営(海外) 【関連企業・団体】:クレハ、デュポン |
クレハの岩崎隆夫社長とデュポンの天羽稔社長は18日共同記者会見し、クレハが米国ウエスト・バージニア州にある米デュポンのBelleプラントの一画に年産4,000トン規模のポリグリコール酸樹脂(PGA)工場を建設することを決めたと発表した。 投資金額は約1億米ドル(約113 億円)で、クレハは2008年早々にも米国に新会社を設立しプラント建設に着手、2010年初頭から商業生産を開始する。数年後には1億米ドル(113億円)を超える事業とする計画だ。 PGAは高ガスバリア性(酸素や炭酸ガスを透過しにくい)、易加水分解性(水との反応で分解しやすくなる)、高強度といった特長を併せもつポリエステル樹脂の一種で、クレハが1995年に世界で初めて工業化規模での生産技術を開発した。一方のデュポンは、主要原料であるグリコール酸を生産しており、クレハには原料を供給する。 ガスバリア性に優れていることから、用途としては炭酸飲料、ビール用の多層ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルなどの分野に期待している。 PGAのガスバリア性はPETの100倍と非常に高く、このため炭酸ガスの保持能力を維持しつつ、PETを減量することを可能にした。現在、ボトル重量に対して1%のPGAをバリア層とするPET 多層ボトル成型技術の確立に見込みが立ち、この結果、PETを20%以上減量できる可能性がみえてきた。 しかも、PGAは易加水分解性であるため、現存のPET のリサイクル工程に適応しており、再生PET の品質にも影響を与えることはない。 また、同樹脂はポリ乳酸樹脂(PLA)等のバイオマス樹脂に各種ガスや水蒸気のバリア性などの機能を付与することができ、それらの利用範囲を拡大することを通じて環境保護に貢献するとしている。 【新会社の概要】 ・ 会社名: Kureha PGA LLC ・ 事業目的: PGA の生産・販売 ・ 資本金: 500万米ドル(段階的に約1億ドルまで増資=クレハグループ100%出資) ・ 所在地: ウエスト・バージニア州 米国デュポン社Belle プラント内 ・ 設立時期: 2008年1月(予定) 【岩崎隆夫・クレハ社長】 高ガスバリア性ということで、将来にいろいろな展開が考えられる。PETボトルの次には生分解プラスチックとの組み合わせで、紙コップとか釣り糸、吸収性縫合糸、また食品包装材料にも利用できる。易加水分解という特徴を活かせば、マスキング材や石油掘削用途もおもしろい。世界にないものを初めて工業化していくのだから、早くユーザーに価値を認めてもらい、グローバル展開していきたい。 【天羽稔・デュポン社長】 日米企業間で緻密に協力し合えることは、すばらしいことだ。しかも日本発信型の技術・製品だ。デュポンとしては単に原料供給にとどまらず、技術開発、マーケッティングも一緒にやっていきたい。発展型のプロジェクトとして、積極的にサポートしていきたい。 ニュースリリース参照 http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1197964640.pdf |