2008年01月04日 | |
経済産業省 | |
年頭所感 細野哲弘製造産業局長 平成20年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。 我が国経済を概観すると、平成14年2月以降、戦後最長の景気拡大を続けており、昨年一年を通しても回復の基調が持続しました。特に、各企業の弛まぬ経営努力と事業展開に支えられ、企業部門の好調さが維持されており、企業収益や生産活動、設備投資は概ね拡大傾向にあります。 その一方で、このところ雇用の改善に足踏みが見られ、特に雇用者の所得は伸び悩んでおります。今後は、いかに企業部門の好調さを家計部門へ波及させ、力強い消費を実現するかが鍵になります。産業界のリーダーや経営者の方々には、家計と企業の好循環が生み出せるよう、一層のご理解とご協力をお願い致します。 さて、製造業を中心に昨年一年を簡単に振り返りますと、4月に減価償却制度が抜本改正されるとともに、企業立地促進法が成立し、それらも契機となり、昨年は国内での大型新規投資のニュースが続きました。その中には、景気回復の遅れる地域への投資も見られ、改めて地域活性化や地域格差是正に対する製造業の重要性を認識した次第です。また、11月の大臣会合において、日アセアンEPA交渉が妥結に至りました。2008年中の発効が見込まれ今後アセアン諸国との経済連携の更なる深化が期待されます。 一方、原油価格の高騰やレアメタル問題に加え、年後半には、サブプライムローン問題、急激な為替変動、建築基準法改正に伴う住宅着工の遅れなどの動きが見られ、今後の影響が懸念されます。また、生活用品や食品の安全に関する問題や産業事故が相次ぎ、企業のコンプライアンスや安全対策の再構築が求められました。さらに、専ら短期的な利益の獲得を目指したファンド等による企業への投資が散見され、企業価値の在り方が問われました。 このような中で、製造産業局としましては、国際競争の激化やエネルギー・環境制約の高まり、若年層のものづくり離れなど多様な課題にも対応しつつ、我が国の製造業が引き続き経済成長の原動力となれるよう、本年も次のような施策に取り組んでまいります。 第一に、次世代を担う新産業群の創出を推進します。 昨年に改定しました「経済成長戦略大綱」に沿って、次世代自動車やロボットに加え、航空機、宇宙、医療といった高信頼性を強みとする次世代産業群の創出に向けた研究開発や環境整備を行います。 とりわけ、他産業への波及効果が高い航空機産業については、将来を担う基盤産業という認識の下、国産ジェット旅客機である次世代環境航空機の開発に重点的に取り組みます。また、自動車産業においては、昨年策定した「次世代自動車・燃料イニシアティブ」に従い、環境・エネルギー制約を克服する次世代自動車の技術開発及び普及促進を実施します。さらに、「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」の着実な実施により、がん対策、再生医療、精密加工技術を活用した医療用機器等の研究開発を進め、世界最高水準の医療技術の実現を目指します。 第二に、「感性価値」に着目した生活文化産業の新しい価値の創造を実現します。 生活文化産業は、国内の量的需要の減少とアジア諸国とのコスト競争の激化の中、より一層の高付加価値化を実現するためには、機能性、信頼性、価格といった従来の価値軸に加えて、新たな価値軸が必要です。そこで、消費者の感性に働きかけ、共感・感動を得ることで顕在化する商品・サービスの価値を「感性価値」として着目し、その価値創造・実現を目指します。具体的には、感性価値の創造の推進母体としてのフォーラムの立ち上げや感性価値創造の事例を紹介・発信するフェアーの開催等を行います。あわせて、「東京発 日本ファッション・ウィーク」の継続的な開催を通じて、我が国ファッションに係る国際的な情報発信・商談機能や国内繊維産地との連携を強化することにより、東京をアジアのファッションビジネス拠点及び若手デザイナーの登竜門として確立します。 第三に、温暖化対策と競争力強化の両立を実現します。 本年7月の北海道洞爺湖サミットのメインテーマに環境問題が挙げられておりますように、地球環境問題はますます重要となっております。こうした中、足下の産業部門のエネルギー起源CO2排出量が、経済成長下でも、基準年比▲5.6%と減少しており、これは業界毎に策定した自主的行動計画に基づいた取組の大きな成果です。本年は、京都議定書の第一約束期間の開始年であり、目標達成のため、引き続き、政府としても最大限努力してまいります。 また、我が国製造業は、省エネ効率の高い製造プロセスや低燃費自動車、省エネ型機器、それらを支えるナノテクなどを活用した高度な部品・材料などにおいて、高い国際競争力を有しています。こうした我が国の強みをいかして、地球規模で温室効果ガスの排出を抑制するため、官民協力して省エネ技術等の海外移転を進めるとともに、本年は、2050年温室効果ガス排出の半減を目指し、革新的技術開発に重点的に取り組みます。 第四に、ものづくりに係る安心・安全のための施策を強化します。 技術革新によって生まれる様々な化学物質は、我々の生活に大きな利便性をもたらす一方、取り扱い方によっては、人体や環境を脅かす危険性をはらんでいます。国民が化学物質をうまく活用しながら安心して生活できる社会や環境を実現するため、本年は、化学物質管理制度の見直しを行います。 さらに、近年、アジアを中心に模倣品の被害が後を絶ちません。最近は、バッグ等ブランド品だけでなく、医薬品、自動車部品など消費者の生命や安全にもかかわる製品にも広がっております。知的財産の保護のみならず、消費者の安全・安心の確保のためにも、中国に加え、インドにも新たに官民合同ミッションを派遣し、政府への働きかけを強化します。さらに、「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」の早期実現に向け最大限努力します。 第五に、ものづくり人材の育成を加速します。 多くの経営者が言われるように、ものづくりは人づくりです。団塊の世代が大量に定年時期を迎える中、技術の継承や若手の育成がこれまで以上に求められます。経済産業省では、ものづくりを支える人材の意欲の向上を図るため、内閣総理大臣表彰の「ものづくり日本大賞」を平成17年に創設し、昨年開催の第2回で青少年を表彰対象に加えました。また、技術の円滑な継承を目指し、様々な産業分野において製造現場の中核となる人材育成の支援を引き続き実施してまいります。 さらに、本年は、文部科学大臣とともに立ち上げた「産業人材育成パートナーシップ」を十二分に活用して、産業界が求める人材を育成するための教育プログラムの開発、そのための大学・大学院の在り方を精力的に検討し、教育・人材育成の場に反映させていきたいと思います。 製造産業局といたしましては、これらの施策を遂行していくことで、我が国製造業ひいては日本経済の更なる発展を実現していきたいと考えております。 最後になりましたが、本年の皆様方のご健康とご多幸をお祈りいたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。 平成20年元旦 |
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