2002年01月04日 |
日化協・香西会長が年頭所感「経済環境はなお厳しいが、化学工業の果たす役割大きい」 |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:住友化学、日本化学工業協会 |
日本化学工業協会の香西昭夫会長(住友化学工業会長)は、2002年の新春を迎えて、要旨次の通り「年頭所感」を発表した。 昨年は、米国経済の減速と、いわゆるITバブルの崩壊、それにテロ事件の影響もあって、世界同時不況に見舞われた。21世紀はまさに激動の幕開けとなった。わが国も平成13年度のGDP成長率は、政府見通しでマイナス1.0%と見込まれるなど「失われた10年」以来の閉塞感が続いている。 化学業界も、こうした経済情勢のなか、国内大手ユーザーのグローバルな事業展開の加速や、アジアからの安値品攻勢、欧米企業のアジア市場への進出などから、内外の需要が低迷し,事業環境は一段と厳しさを増している。特に、2004年のポリオレフィン関税一括引き下げを控える石化業界は、汎用品を中心に国内生産体制の再編やS&Bの検討、汎用品から高付加価値品への事業構造転換などの対応が待ったなしといえる。 しかし、一方で化学工業は、ナノテクノロジーやバイオなどの先端技術を基盤とする大きな技術革新(イノベーション)の時代も迎えつつある。 今日の化学産業を支えているのは、新物質・素材の発明・発見や、プロセス・触媒の開発といったイノベーションである。これらは、懸命な研究開発努力によって生み出されてきたものだ。 昨年、ノ-ベル賞創設100周年という記念すべき年に、前年の白川英樹先生に続いて、名古屋大学の野依良治先生がノーベル化学賞を受章されたことは、業界に大きな夢と希望を与えてくれた。『化学は美しく,刺激的で,人類に貢献できる素晴らしい学問だ。物質を人工的に作り出せるのは化学だけであり、サイエンスの中でも最も重要なものだ』という先生の受賞会見での言葉が実に印象的だった。サイエンスは人類にとって最大の財産であり、その中核的な役割を化学が果たしていることを、あらためて強く自覚したところだ。 さて、今年はリオの地球環境サミットから10年の節目を迎え、9月には南アフリカのヨハネスブルグで「持続可能な開発のための世界サミット」が開催される。_環境の世紀_ともいわれる21世紀は,産業・経済活動もこれまでの大量生産・消費型から、地球環境を見据えた持続可能な発展へとシフトしていくことが世界共通の課題となっている。環境への影響を最小化する社会システムの構築が目標だ。 化学技術は、21世紀において、廃棄物削減やリサイクルの促進、地球温暖化の防止、化学物質の安全性対策など、重要性を増しているさまざまな課題の解決にあたって、より一層主導的な役割を果していかなければならない。 日化協は、ICCA(国際化学工業協会協議会)の一員として、環境・安全・健康問題を最重要テーマにかかげ、自主管理・自己責任を基本方針とするレスポンシブル・ケア活動を展開している。その一環として、産業界の自主的国際共同プロジェクトである、高生産量既存化学物質の安全性データの再点検(HPV)やエンドクリン、化学発ガン、過敏症など化学品の安全性に関する基礎的研究を積極的に進めている。 本年は、化学物質管理促進法(PRTR)に基づくデータ公表が始まるが、業界としても社会との対話・リスクコミュニケーションをさらに促進し、相互理解を深めながら、社会の信頼を高めていかなければならない。 経済環境は極めて厳しいが、この国・この地球をより良いものとしていくために、われわれ化学に携わる者一同、技術革新と環境安全への取り組みを軸に、化学産業の未来に確たる信念をもち、発展に努めていく決意を新たにしたい。 |