2003年02月13日
フェノールのアジアの需給、一段と逼迫の見通し
需要がさらに拡大、欧米からの流入増がないと深刻な事態
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:三井化学、三菱化学

 三井化学などフェノールメーカー筋によると、アジア地域におけるフェノールの今年の需給バランスは昨年以上にタイト化する見通しとなってきた。フェノール樹脂とBPA(ビスフェノールA)向けの需要が引き続き大幅な伸びを遂げると予想されるのに対して、供給力の拡大規模がごくわずかにとどまる見通しにあるからだ。
 今年も日本を含めたアジア域内の供給力だけで需要を賄うことは到底不可能で、このため欧米からどのていどの量を持ち込めるかが重要なポイントとなる。
 
 最大手の三井化学の推定によると、フェノールのアジア地域における昨年の総需要量は、日本が前年比9.7%増の75万t、日本を除くアジア地域が同25%増の117万tとなった模様。米国は同0.6%増の212万t、欧州は同0.7%減の193万tと見られているので、アジア地域の伸びは文字通り突出したものとなっているといえる。
 
 そのアジア地域の今年の需要量については、日本を除くアジア地域が昨年を19%上回って140万tになるというのが同社の見方。日本の場合は1.5%増の76万tにとどまると判断している。米国の需要は0.6%減の210万t、欧州は2.1%増の197万tと予想している。
 
 対する供給力は、世界全体でも大型の新増設がないため昨年をわずかに上回るにとどまる見通しにある。アジア地域では、昨年末に完工した三井化学シンガポールの年産5万t能力の増強設備が1月から本稼働に入っているのに加え、今年5〜6月に三菱化学が鹿島に増設する同7万tプラントが年後半から戦列に加わるにすぎない。昨年9月の事故の発生以降全面的に運休していた米・イネオス・フェノールのアラバマ州の同40t設備は1月から稼働を再開した模様だが、現在の稼働率がどのていどのものとなっているかは明らかでなく、今後の見通しもはっきりしていない。仮にフル稼働を続けられても、アジア市場にどれだけ振り向けてくるかとなると不透明だ。欧米のフェノールの価格が原料の高騰によって急騰していて、よほどアジアのユーザーやトレーダーが高値のオファーを出さないと商談に応じてこないと見られる。
 こうしたことから、アジア地域の今年の需給バランスは33万tていどのショートになる公算が濃厚というのが同社の判断である。昨年より不足分がさらに7万t増えるという計算なわけで、これを欧米品の持ち込みで完全に補充するのは事実上不可能と見る向きが関係筋の圧倒的多数を占めている。