2003年03月03日
NECが開発中のナノテクノロジー製品を明示
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:NEC、トクヤマ

 NECはナノテクノロジー(微細加工技術)を使ったナノバイオチップ、カーボンナノチューブ燃料電池、フォトニック結晶などの研究開発に取り組んでいるが、ナノテック2003年展(幕張)で、これらのうち数件の機能、製品化への見通し、経過などを明らかにした。
 
 同社は10年以上前から基盤技術としてのナノテクノロジーの開発に着手、量子コンピュータ素子動作実証、カーボンナノチューブの発見、世界最小トランジスタの動作実証などで成果を上げてきた。
 
 これらはIT(情報技術)社会の実現に向けて超高集積LSTシステム、超高速ネットワークシステム、高性能コンピューターシステムなどの開発が望まれるなか、その基盤技術となるもの。とくにバイオチップやカーボンナノチューブ(CNT)など以下の化学関連の製品の開発が注目される。
 
<ナノバイオチップ>
 病気の予防や早期発見を確実にするためDNA解析・たん白質解析、手軽な臨床検査・在宅診断などが望まれている。NECとしては半導体のナノ加工技術を応用して、超高速に極微量のDNAやたん白質の解析が可能のチップの開発を進めている。独自のゲルろ過型人工ナノ構造を開発し、大きさによるDNAの分離に成功した。
 
<フォトニック結晶>
 ブロードバンド光通信サービスに向けてフォトニック結晶を用いた小型で省エネ、低コストの通信ノード用光集積素子の開発を行っている。東北大学と共同でフォトニック結晶による波長分割多量(WDM)用分波素子を開発し、その動作実証に成功した。フォトニック結晶中では光の強い閉じ込めや急激な曲げが可能で、これを利用して微小光学素子/回路が実現できる。
 
<カーボンナノチューブ燃料電池>
 カーボンナノホーンは複雑な表面形状をもち、化学的に安定で導電性があるため、燃料電池用白金触媒の支持体として最適な材料。これを用いて携帯電話やパソコンに搭載できる小型携帯燃料電池の開発を進めている。

<カーボンナノチューブ・トランジスタ>
 半導体のCNTを流れる電子の速度は現在のLSTで使われているシリコン(Si)より数倍大きくなることが予測されている。すでにCNTをチャンネルに用いたトランジスタを試作し、このトランジスタが、Siトランジスタと同じ動作原理で動くこと、Siトランジスタの10倍程度大きな電流を制御できることを実証、その高速動作の可能性を明らかにした。
 
<ナノ加工・微細トランジスタ>
 世界トップレベルの基盤技術としての微細加工技術を保有している。トクヤマと共同でカリックスアレーンレジストをより使いやすくするとともに解像度を向上させ、8nmのパターン形成を可能にした。ナノレベルの微細加工技術により、世界最小の8nmのゲート長を持つSiトランジスタの作製に成功、微細トランジスタの物理的な動作限界を明らかにした。