2003年03月11日
有機と無機を積み上げて新しい物質群の化学
日本化学会の講演・特別企画「複合電子系のボトムアップ化学」から
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:日本化学会

 日本化学会(TEL03-3292-6161)が3月18日から4日間、早大西早稲田キャンパスで行う第83春季年会の特別企画講演47件の中から「複合電子系のボトムアップ化学」のポイントを4件取り上げる。
 この企画は東京大学藤田誠教授と京都大学北川進教授が新しい研究分野を創出するものとして選んだ8件のなかの4件である。
 
 ボトムアップ化学とは分子を積み上げる化学。分子設計にもとづき、フラスコの中で分子を精密に積み上げることはナノ(10億分の1)メートルスケールの極微な物質群を創出する最有力のひとつで、ナノサイエンス中核基盤技術として有力視されている。ただ、これまでに物質の真の性質を決める電子状態を
ボトムアップで創出する研究はあまり知られていない。

 北川氏らは無機化合物の電子状態の多様性と有機化合物の優れた分子性や設計性を相乗的に組み合わせ、複合電子系物質と呼べる物質群を創出することを提唱している。
 
1<酸素分子を1列に並べる — 酸素分子ナノワイヤー>
 北川教授らは多重機能をもった多孔質金属錯体のボトムアップ構築を研究してきた。今回、このような錯体のチャンネル構造の均一性に注目し、チャンネル内に酸素分子を規則的に一次配列させた。酸素分子は2万気圧下の状態で詰め込まれている。
 
 酸素分子は極微小の磁石で、かつ電子を出し入れする性質があるため、さまざまな磁性、伝導材料への展開が期待される。細孔物質を用いての新しい「気体集積科学」とも呼べ分野の創出、それにもとづく材料の創製が予測される。
日本独自の物質、技術として世界に発信できるものである。
 具体的には酸素分子の入る「穴」をつくり、ゼオライトより優れた電子設計ができる。(続く)