2003年03月18日
三井化学の触媒シンポ、盛況裡に閉幕
質疑応答も活発に
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:三井化学

 三井化学が「重合触媒最前線」をテーマに開いた「第1回触媒科学国際シンポジウム」が18日正午過ぎ盛況のうちに閉幕した。同シンポジウムは、同社が触媒科学研究所の開設を記念して千葉県木更津市のかずさアカデミアホールで17、18の両日にわたって開催したもの。

 同シンポジウムでは、ノーベル賞受賞者である野依良治・名古屋大学教授とJ-M.レーン・ルイパスツール大学教授をはじめとしたポリマー重合触媒の世界的権威合計12人が講師をつとめ、それぞれの研究活動について講演し、あわせて、多数の参加者の質問にもていねいに答えた。参加者は二日間ともにおよそ1,100人であった。

 二日目の18日に講演したのは、レーン教授(基調講演)、岡本佳男・名古屋大学教授、K.W.スウォーガー・ダウケミカル副社長、柏典夫・三井化学シニアリサーチフェローの4氏で「講演要旨」は次の通り。

▽J-M.レーン教授=「超分子自己組織化から動力学的コンビナトリアル・ケミストリーへ」

 現在は、ライブラリー分子自身に可逆的組み合わせを行わせながらあらゆる可能性を自動的に探索させ、そして最終的には分子認識で最も相性のよい目的物を構築させるブァーチャルコンビナトリアル・ライブラリーの実現が可能となりつつある。これに伴い、環境に対して独自に的確に対応する分子集合体、例えば高機能センサーなどの開発の道が開けることになり、先行きが楽しみだ。

▽岡本佳男教授=「ルイス酸を用いたラジカル重合における立体規制」

 私たちグループは、希土類金属系ルイス酸の存在下のラジカル重合がビニルエステルやメタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類の重合体の合成において顕著な立体規制能を有することを発見した。また、この触媒系を用いて反応条件を最適化することでアクリルアミドやメタクルアミドの高立体規制ラジカル重合を実現し、さらには、高度の分子量コントロールが可能なリビング重合の可能性も見出している。

▽k.W.スウォーガ-博士=「新世代触媒を用いた分子構築」

 ダウでは、独自のシングルサイト触媒を用いてより付加価値の高いポリオレフィン製造する技術を確立し、そして、この技術の持つ強みをフルに生かすための当社独自の新規ビジネスモデル「シックスディモデル」も確立できた。これによって、現在の当社は顧客のニーズをポリマー設計や生産の適正化に迅速かつ的確に反映していけるようになり、業績の向上を図っている。

▽柏典夫博士=「ポリオレフィン産業における触媒革新;三井化学を例に」

 三井化学は、塩化マグネシウム担持型チタン触媒やメタロセン触媒の開発によってポリオレフィン産業の発展に大きく寄与してきた。そして現在は、ポストメタロセン触媒による高温リビング重合や、メタロセン触媒によるポリオレフィンへの官能基導入といったより先進的な技術の研究によってこれまでにないユニークなポリマーの創出に取り組んでいるところだ。特に力を入れているのは、全く性質の異なるポリマー同士を化学的に結合してナノレベルでポリマー相構造を制御することである。現在、ポリオレフィン分子鎖上でラジカル重合や開環重合を進行させるのに成功し、ポリオレフィンと極性ポリマーのハイブリッドのナノ構造制御を実現できつつある。近い将来、ポリエチレンとEPR、ポリエtレンとPMMなどいくつかの共重合が任意に得られるようになろう。