2003年04月14日
三菱化学、イリジウム錯体で低分子系有機EL素子を新展開
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:三菱化学

 三菱化学は低分子系有機EL(エレクトロルミネッセンス)の発光素子について、りん光素子の効率の高さに注目し、イリジウム錯体を中心とする励起三重項状態の利用に力を入れていることを明らかにした。
 
 これは4月中旬に行われたEDF電子ディスプレイ・フォーラム2003(東京ビッグサイト)で「低分子型有機EL素子:材料開発の現状と動向」と題して説明したもので、低分子系有機EL素子の開発にりん光をドープすることで外部量子効率5%を上回る効率の達成が話題となっている。
 
 低分子系では色素ドープにより発光効率の向上がはかられてきた。赤色発光を除けば外部量子効率が限界値(5%)に近づきつつあるが、同社では緑発光で外部量子効率19%、発光効率65(cd/A)を確認した。
 
 けい光による一重項をりん光で励起三重項発光させて、従来の輝度を4倍にするというこの新しい技術は、高分子系有機EL素子の開発に応用されてきたが、三菱化学の取り組みで、新たな展開が見込まれそうである。
 
 効率といっても駆動安定性がとくに求められるが、同社では緑色発光素子が比較的高い安定性を示し、初期輝度300cd/〓で半減寿命が1万時間以上に達したとしている。これは正孔阻止層を改良したもの。白色素子に関しては従来、寿命が100時間と短かったが、この改良にも期待が持てる状況になったとしている。
 
 りん光発光素子の登場によって、高発光効率が達成されれば有機ELを照明の分野に応用することも可能になる。同社では液晶ディスプレイで開発された低温ポリシリコン技術の有機ELへの利用を含めて、大画面化への道も拓けるとみている。