2003年04月23日
世界のフェノール需給逼迫、特にアジアが超タイト
BPA向けの需要の拡大に各国の定修が重なる
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:三井化学

 三井化学によると、フェノールの需給バランスが世界全体でここにきて急速にタイト化してきた。その要因としては、(1) BPA(ビスフェノールA)向けを中心に需要が一段と活発化してきたこと(2)アジアと欧州でフェノールメーカーの定修が相次いでスタートし始めたこと(3)米国のフェノールメーカーが収支バランスの改善を目的に生産調整に乗り出したこと-の3点が挙げられると同社では説明している。
 
 同社によると、現在のフェノールの需給は特にアジア地域で逼迫の度合いが強く、第2・四半期と第3・四半期はともに大幅な品不足となるのが必至の見通しという。年トータルでも30万tの供給力不足になる公算が濃厚と同社では予想している。
 
 こうした厳しい逼迫予想は、この1年間にアジア地域に集中して新増設されたBPAの設備が順次商業生産に入って需要が大幅に増えてきたこと、日本と中国でフェノールプラントの春の定修が始まったこと、欧米両地域における需給の適性化によって両地域からのフェノールの調達が当分の間見込めなくなったこと、といった国際需給環境の変化をにらんでのもの。
 
 同社の調べによると、この1年間に新増設されたBPAプラントの規模は合計で年産60万tに達しており、これに必要なフェノールは年51万6,000tとなる。これだけでもかなりの増産が必要ということになる。
 
 ところが当面の供給力は逆に縮小が必至となっている。最大の要因は定修の集中にある。日本と中国で合計5社の設備が定修のため運休、加えて、かねてからアジアの需要家にとって重要な供給ソースである欧州でも3社が春の定修に入っている。日本と中国では4月から7月までの間に合計年産80万t能力の設備が、また欧州では4〜5月に計78万tのプラントが運休する。
 
 こうした定修の集中に加えてもうひとつ軽視できない縮小要因としては、米国のフェノールメーカーによる相次ぐ生産調整が挙げられる。同社によると、米国では原料の高騰に対処しての価格修正を目的に各社が稼動率を85%前後まで落としている。これに伴い、アジア地域に対する輸出も市況がもう一段上のレベルに達するまで手控える政策を取っている。
 
 こうした点から、同社のみならず他のフェノールメーカーや大手商社の間でも、アジア全体における需給バランスは少なくとも向こう半年にわたってこれまでにない超タイトバランスで推移するとの見方が広まっている。