2003年07月18日
ANの国際需給バランス、下期は再びタイト化の公算
需要が回復、供給力は定修と一部企業の撤退で縮小
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:旭化成、昭和電工、住友化学

 旭化成などアクリロニトリル(AN)メーカーや大手商社によると、今年下期におけるANの国際需給バランスは再びタイト化する公算が濃厚となってきた。
 
 これは、中国、韓国、台湾などアジア諸国の需要がABS樹脂向けを中心に明確な回復傾向をたどり始めてきたのに加え、ANの供給能力が一部のANメーカーの撤退や大型装置の定修の集中によって上期をかなり下回る見込みとなってきたことによるもの。
 ANの需要は、イラク戦争前の前倒し需要の反動とSARS問題のクローズアップによって4月から5月にかけてアジア地域全体で大きく落ち込み、市況もそれに歩調を合わせるかたちで下降線をたどった。しかし、6月に入ると韓国や台湾のABS樹脂メーカーがそれぞれの国内と進出先の中国の両方で相次いで増産に踏み切り、また中国の繊維向けの需要も上向いてきたため最近のアジア地域全体のANの需給バランスは明らかに改善されつつある。
 このためわが国のANメーカーや大手商社では、7月以降のアジア地域の需要は第2・四半期と異なり前年を上回るのが確実と予想している。
 一方の供給数量については、伊・エニケムが6月中旬いらい年産10万t設備を止めたままで稼動を再開する気配を見せていないことや、9月初旬から10月末までの間、世界各地でANプラントが相次いで定修のため運休する見通しにあるので大幅な縮小が避けれないと判断している。現在、秋の定修・運休が確実と見られているのは、米・BPケミカルスの年産46万t装置、米・ソルーシアの同51万t装置のうちの3分の1の系列、独・BPケルンの同28万tプラントのうちの同10万t装置、韓国・東西石油化学の同27万t設備、住友化学ならびに昭和電工のそれぞれ同6万tプラントなど。
 これに加えて、米・スターリングケミカルスが3分の1系列の運休を依然として続け、さらにはエニケムが操業を再開しないままいくと世界全体の需給が再び逼迫するのは確実というのがこれら関係筋に共通した見方となってきている。