2003年09月16日
昭電、次世代型太陽電池「電極用酸化チタンペースト」 上市
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:昭和電工

昭和電工(大橋光夫社長)は16日、「低温成膜型色素増感型太陽電池の電極用酸化チタンペースト SP-X」のサンプル出荷を開始したと発表した。有機と無機化学技術の融合から生れた高機能製品として注目される。

 色素増感型太陽電池(DSC)は、色素が光を吸収した際に発生する励起電子が、酸化チタン等の半導体粒子の電極に流れ、起電力を発生する仕組み(光電変換)。現行のシリコン型太陽電池に次ぐ次世代型の高性能太陽電池とされている。シリコン型と比較して、製造が容易で安価なのが特徴。

 DSCの開発には2つの方向性があり、一つは、従来のシリコン型太陽電池の代替用途で、ガラスを基板としたもの。もう一つは、折り曲げが可能な樹脂フィルムを基板とし、フレキシブルな面との組み合わせ(例えば帽子・傘・ブラインドなどの生活環境関連製品や車両など)による、いわば"携帯発電機能"の開発。

 酸化チタン粒子は、色素から発生した電子を効率的に利用する上で、DSCのキー・マテリアルと位置付けられている。

 従来、光電変換性能発揮のためには、電極用酸化チタン粒子に対して500℃近い熱処理が必要なため、電極の基板にはガラスが用いられていた。しかし、ガラスは軽量化・フレキシブル化・携帯性などに難点があり、樹脂フィルム基板(PET樹脂)が検討されていた。
 
 樹脂フィルム基板の場合は、耐熱性の点で150℃程度までしか加熱できず、電極用酸化チタン粒子に良好な光電変換性能を与えることは困難だった。

 同社は、今回(1)酸化チタン一次粒子を10~500nmの範囲で任意な粒径に作り分けることが可能な「ナノサイズの粒径制御技術」
(2)酸化チタン粒子上の色素担持や、酸化チタン膜内における電子移動・電解質の拡散などの因子を考慮に入れた、酸化チタン構造体の付与
(3)長波長側の光をより有効に利用しうる、酸化チタン粒子の粒径組合せ 
(4)有機系バインダー配合の最適化
などによって開発に成功した。
 
 同社は、すでに同製品を使用した樹脂フィルム基板の低温成膜型DSC試作で、4%の光電変換効率を実証しているという。生産は、連結子会社の昭和タイタニウム(富山市、神力紘明社長)が担当。昭電では、酸化チタン製品群として2010年に70億円の売上を目指している。