2003年10月09日
住友金属、含塩ビ廃材のガス化溶融技術開発の仕上げに
HCL装置を設置して塩素の回収試験に着手へ
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:環境省

 住友金属工業は16日から同社の波崎研究センター内で、含塩ビ廃材のガス化溶融技術の開発の最終的な仕上げの実験活動をスタートすることになった。
 
 これは、土砂などの異物が付着するなどで汚れがひどく既存の技術ではリサイクルが容易でない使用済み塩ビパイプなどの塩ビ廃材を高温で熱分解ガス化し、クリーンな高カロリーガスや塩素を回収して有効利用していくという世界でも例のない高効率の新プロセスを確立するためのもの。
 高カロリーガスは、ガスエンジン等の高効率発電あるいはメタノールやジメチルエーテル等の合成原料としての再利用が、また一方の塩素は、工業用塩酸や塩ビモノマー原料としての有効利用がそれぞれ大きく期待されている。

 
 同社は独自の研究で基礎技術を確立、昨年春以降はそれを工業化レベルに引き上げるための技術のブラッシュアップに取り組んできた。ダイオキシン類の発生は基準値以下にきちんと抑えていける点が確認されており、また、塩ビ廃材に含まれる不燃物は全て高品質スラグに再生される設計にもなっている。このため、環境省が同技術の持つ総合的な有意性を評価して平成14年度に「次世代廃棄物処理技術基盤整備事業補助金」を交付、加えて、今回の最終的な仕上げに必要な実験(確認試験)に対しても引き続き同補助金を交付することにしている。

 16日からスタートする実験は、これまでの技術改良によって(1)回収する塩素中の不純物の低減(2)塩素によるバグフィルターの腐食の防止(3)塩素からHCLの100%回収--の3点が確実に実現できるようになったかどうかを確認するためのもの。
 同社では、来年1月末までに合計10回の実験を実施する計画。実験は、既存の1日当たり2規模の処理処理能力を持つガス化溶融プラントにHCL精製装置を設置して進めていく。
 狙い通りの技術が確立されると、多くが埋め立て処理されるにとどまっている含塩ビ廃材が効率よく経済的に高カロリーガスや化学原料として再生・活用されていく道が開けるだけに実験結果が注目される。