2003年10月15日
PS産業の構造転換がさらに進展、内需型で均衡維持へ
設備の縮小を支えに採算を確保できない輸出を大幅に削減
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:PSジャパン、日本スチレン工業会

 PS(ポリスチレン)業界によるPS産業の構造転換が今後さらに大きく進展する見通しとなってきた。同樹脂各社は96年以降今年6月までの間に思い切ったアライアンスと大幅な設備処理を実施してきたが、今後は各社とも、採算を確保できないケースの多い輸出を思い切ってカットして内需に圧倒的な重点を置いた独立路線型の事業展開でプロフィットを追求していくことにしている。すでに各社とも今年春以降は、中国向けを中心とした輸出成約量をかつての半分以下に減らしてきており、来年以降も一段と輸出比率を引き下げていく構えにある。これによって、各社が国内市場でそれぞれの特徴と強みをどう活かしていくかが注目される。
 
 PS業界各社がこれまで取り組んできた構造転換策は、アライアンスと過剰設備の処理の2点であった。いずれも固定費の削減による国際競争力の強化を目的としたもので、96年当時に合計9社を数えていた企業数は現在までに4社に減り、年間155万9,000tに達していた総生産能力は今年7月までに104万4,000tまで縮小している。設備の廃棄率は実に33%にも達している。汎用樹脂のなかでもここまで徹底した規模の再編と設備処理を実施したところはPS業界をおいてほかにない。
 しかし、そうしたPS業界にもここにきて新たな大きな問題が浮上してきた。それは、同樹脂の消化の20%以上を占めてきた輸出による採算の確保が、最大の市場である中国を巡る各国間のシェア争いの激化によって極めて困難になってきたことだ。中国の需要は年々拡大の一途にあるが、国産設備も増強されつつあり、加えて台湾、韓国、タイなどかねてから輸出余力の豊富な国々がこれまで以上に積極的に中国に売り込みをかけてきている。こうした結果、最近の中国からの引き合い価格の多くがわが国のPSメーカーの採算ラインを完全に下回るレベルまで下がってきており、しかもこの傾向は今後もなお当分の間続くと見られている。
 
 このためわが国のPS各社では、すでに大幅な設備処理を実現して適正需給バランスを回復できた中で赤字の計上が避けられない輸出になおしがみついていくことは自らの首を絞めるにほかならないとして、この春以降は大幅な輸出カットに踏み切っているもの。
 PSの過去数年の輸出数量は、00年が14万8,000t、01年が12万7,000t、02年が13万9,000tと推移してきた。今年に入ってからも、しばらくは従来とほぼ同じレベルで輸出してきた。しかし4月以降は例年の2分の1前後に激減している。折りしもPSジャパンが年産8万5,000t能力のPS設備を廃棄した時期をはさんで顕在化してきている。
 日本スチレン工業会では、このままいくと今年の輸出量は前年を46%下回って7万5,000tに縮小すると予想している。そして来年も各社が一段と赤字成約を手控える見通しにあるので、総輸出量はさらに20%減って6万tになり、05年には17%減の5万tまで縮小すると推定している。この予想通りに行くと、ピーク時の97年には22%に達していた輸出比率が05年にはわずか5%に低下することになる。もっとも、そうした縮小分のいくらかは各社がアジア各国に設立しているPS専門企業によってカバーされていくことになりそう。あとは、各社が国内で新規用途をどこまで開拓していくかが大きなポイントとなろう。