2003年11月25日
中西・三井化学社長が会見、機能性材料事業の拡大に意欲
10年後の営業利益構成比、全体の70%を目標に
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:三井化学

 三井化学の中西宏幸社長は25日記者会見し、新たな経営ビジョンと当面の課題、04年から07年までの4年間を実施期間とする中期経営計画「04中期経営計画」の概要を説明した。
 
 経営ビジョンは、“世界の市場で存在感のある強い三井化学グループ”が目指すべき企業像とし、「事業構造の変革と収益力強化によって、07年には連結ベース売上高1兆3,000億円、経常利益1,000億円を計上できるように持っていきたい」と業績目標を示した。このなかで、経常利益の年間伸び率の目標を16%という高レベルに設定している点が特に注目された。
 
 一方、当面の課題としては、「さらなる選択と集中や財務体質の強化などが最重要テーマ」としながらも、「財務体質は改善が進み、有利子負債の削減は目標を上回るペースできている。今年度末には当初目標の5,215億円を下回る4,900億円台に縮小できる」との見通しを示した。
 
 「04中計」については、「12月末までに最終案をまとめるが、最大のポイントは機能性材料分野の拡大・成長を図ることにある」と述べ、「10年後の2014年度には営業利益全体の70%を機能性材料事業部門で占めるようにしたい」と、同部門をグループ全体の収益の最大の柱にしていく考えを強調した。
 
【中西社長の発言要旨】
 ◇経営の基本テーマは「変革への挑戦」であり、そして目指すべき企業像は「世界の市場で存在感のある強い三井化学グループ」だ。かっては「強い“総合化学企業”を目指す」としていたが、現在では“総合化学”という言葉は時代にマッチしないと考えて外した。「強い三井化学グループ」の実現に当たっては「事業構造の変革と収益力強化」が不可欠だ。
 
◇そのためには、競争力のある石化・基礎化学事業を母体として、機能性材料分野のさらなる拡大・成長を図っていきたい。それによって、次期中期経営計画「04中計」の最終目標年度である07年度には売上高1兆3,000億円、経常利益1,000億円を達成したい。年間成長率は売上高が5%、経常利益が16%ということになる。経常利益の拡大に特に重点を置いていく。
 
◇03年度の経営課題としては(1)さらなる「選択と集中」(2)財務体質の強化(3)新しい人事・賃金制度の構築(4)経営機構の改革(5)SAPR/3の全社展開--の5点が挙げられる。これらの課題はいずれも順調に実現されつつある。内外におけるエラストマーや特殊樹脂の設備の新増設、ウレタンの増設、PDP光学フィルター設備の増強、大阪工場のプロピレンセンター化、小型設備の廃棄を前提としたPPの新鋭大型設備の建設、PPコンパウンド事業の国際展開、PTAやPETの海外での新増設、クメンの自給化体制の整備--などが代表例といえる。

 ◇財務体質の強化面では、有利子負債を極めて順調に縮小できている。00年度の有利子負債は6,515億円であったが、今年度末には4,900億円台に減らせる見通しになっている。当初は3年で1,300億円を減らす計画であったが、実際には1,500億円を削減できる見込みとなっている。
 
◇03年度の業績は、売上高も利益も下期で大幅に改善できる見通しにある。経常利益は550億円で前期の487億円を上回る見込みにある。営業利益も増益となるが、これにはフェノール、BP-A、PPコンパウンド、PTA、エラストマーなどの海外における順調な伸びが少なからず寄与していくと見ている。

 ◇「04中期」の経営目標としては、(1)量的拡大から質的拡大への転換(2)効率的な会社経営の実現(3)成長を支える健全な財務体質の実現と強化--の3点が挙げられる。具体的には、先に述べたように連結売上高を1兆3,000億円、連結経常利益を1,000億円とするほか、ROAを7%とする、株主資本比率に対する有利子負債比率を1.0倍に持っていく--などが重要課題となる。

 ◇中計実現のキーワードは「事業構造の変革と収益力強化」で、その場合の最重要課題は「機能性材料のさらなる拡大・成長」だ。コア事業に経営資源を重点投入すること、競争力のある製品をグローバルに展開していくこと、新製品の育成・拡大に一層力をいれていくこと、などが基本テーマとなる。エラストマーや特殊ポリオレフィンなど機能性オレフィンポリマー、ウレタン、情報・電子材料、ヘルスケア材料などの事業の拡充に特に力を入れていきたい。急成長するアジア市場でのエラストマーのリーダーの地位の確立、自動車用途など得意セグメントでの事業の拡大、成長するIT分野での新規需要の拡大、TPXや環状オレフィン・コポリマーなどの生産能力の増強--などが具体的な戦略課題に挙げられる。ついては、当社が得意とする触媒科学技術をフルに生かしてFI触媒やPZN触媒さらには酵素触媒などの新触媒による新製品を相次いで開発していきたい。
 その結果、2014年度の営業利益全体の70%を機能性材料部門で上げていくように持っていきたい。
 
◇一方の石化・基礎化分野については、プロピレンセンター化、PPのS&B、クメンの完全自製化、コア事業のアジアでの展開--などによって収益力を強化していきたい。すでに実行段階に入っているものが多いが、今後は千葉地域におけるリファイナリーとの連携によるコスト競争力の強化などにも積極的に取り組んでいきたい。