2003年12月08日
三井化学、PHもBPAもアジアで品不足が続くと予想
中国を中心にPC向け等の需要がさらに拡大と想定
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:三井化学

 アジア地域におけるフェノール・チェーンの最大手企業である三井化学はこのほど、フェノール(PH)とビスフェノール-A(BPA)の世界全体とアジア地域における来年の需給見通しをまとめた。
 それによると、アジア地域のバランスは、両製品とも来年も依然として供給力不足のまま推移するとの予想となっている。これは「中国を中心としたアジア地域でポリカーボネート(PC)向けをはじめとした各種誘導品の需要が引き続き順調な伸びを遂げるのが確実」(田中稔一・同社常務)との見方によるもので、「来年春から夏にかけて台湾や中国で新増設プラントが相次いで稼動を開始してもなおアジア地域全体の旺盛な需要を満たせず、来年はおろか06年末まで品不足が続く」(同常務)と、タイトバランスが中期にわたって続くとも予想している点が注目される。
 
 同社がまとめた展望のうち、全世界におけるPHの04年の需給見通しは、需要が03年の見込み数量の4%増の759万9,000t、供給力が同5%増の832万6,000tとなっている。単純平均稼働率は91%ということになる。もっとも、91%という稼働率はPHのような製品の場合はかなり高率といえるので、全体にウエルバランスが維持されていくということになる。
 このうちのアジア地域の見通しは、需要が同5%増の153万1,000t、対する供給力が同26%増の145万4,000tとなっている。供給力はかなり増えるものの、なお5%ていどの品不足になるとの結論だ。同社では、今年のアジア地域のバランスは、需要が前年比16%増の146万1,000t、供給が同11%増の115万4,000tとなり、供給力の不足量が30万7,000tにも達すると予想しているが、来年も依然として品不足の事態が続くのが確実と判断しているわけ。
 来年5月には台湾のFCFCが年産20万tの、また7月には同じ台湾の長春石油化学がやはり20万tのPHプラントを完成するが、中国の輸入の拡大等で吸収されて品不足の解消に寄与することにはならないというのが同社の見方である。
 アジア地域の需要の内訳については、BPA向けが同2%増の57万1,000t、フェノール樹脂向けが同7%増の90万8,000t、シクロヘキサノン向けが同2%増の5万2,000t--と予想している。
 
 一方のBPAの全世界の見通しは、需要が03年の見込み量対比6%増の309万t、供給力も同6%増の375万tとなっている。平均稼働率は82%で、03年と同じレベルになるとの予想だ。
 しかしアジア地域では、PHと同様に引き続き需要が供給量を上回るとの予想になっている。需要が同10%増の93万2,000tとなり、それに対する供給は同19%の増加となるもののなお86万5,000tにとどまり、その結果、6万7,000tがショートすることになるとの見方である。不足率は8%と想定している。
 BPAの場合も、FCFCと長春石化がそれぞれ同13万t設備を立ち上げる計画であり、また中国でも複数のBPA装置が戦列に加わると予想されているが、同社ではPCの需要の拡大が確実なので増産分はたちどころにして吸収され、ショートバランスが続くことになると判断している。
 需要予想の内訳は、PC向けが同12%増の58万8,000t、エポキシ樹脂その他が同7%増の34万4,000tとなっている。
 
 こうした中での同社の当面の最重要課題は「内外の販売価格を原料価格見合いのレベルに引き上げることに尽きる」(同常務)という。年初らいベンゼンとプロピレンがともに高騰してきたにもかかわらず製品価格への転嫁が不十分なままなので、早急に底上げを果たしたいとしている。また、中期の重要テーマについては「BPAの中国への資本進出が喫緊の経営課題の一つであり、原料の安定確保の見通しがつき次第実現に乗り出したい」(同常務)とグローバルな事業展開の充実に意欲十分なところを示している。