2003年12月10日
VOC検討会、法制度による排出抑制が必要と結論
排出口の濃度規制案など具体策もとりまとめ
【カテゴリー】:環境/安全
【関連企業・団体】:環境省、経済産業省

 「揮発性有機化合物(VOC)抑制検討会(委員長・坂本和彦埼玉大学院理工学研究科教授)」は9日に開いた第5回会合で、VOCの排出抑制についての同検討会のこれまでの検討結果をとりまとめた。
 
 その内容は、「VOCの排出抑制は不可欠であり、ついては法制度による規制が必要」と結論したもので、法制度によって規制する場合の方法論についても具体的に明示している。これを受けて環境省では16日に中央環境審議会大気環境部会にこの検討結果の内容を報告し、審議を求めることにしている。
 VOCの排出抑制については、厳しく関係業界の行動を法規制すべきと指摘する向きが存在する一方で、すでに一定の成果を上げている事業者の自主規制に引き続き委ねていくのがベターだとする主張も少なくないなど様々な意見があって、政府としても対応に慎重を期してきた。こうした中での今回の同検討会の結論は、環境行政の行方に少なからずインパクトをおよぼすと見られる。ただし、産業界や経済産業省などの間には、さらに多面的な検討を重ねていくことが大切との声が強く、環境省が一気に同検討会の結論に沿った法規制に踏み切るかどうかはまだはっきりしない。
 
 この日に取りまとめられた検討結果は、(1)VOCの排出抑制の必要性(2)排出抑制のための法制度の必要性(3)排出抑制の枠組み(4)対象とするVOCの範囲(5)排出濃度基準を定めるに当たっての基本的な考え方(6)排出規制の対象施設を選定するに当たっての基本的な考え方(7)排出規制を行う地域(8)VOCの測定法--の8項目。
 (1)の項目については、「VOCが光化学オキシダントの原因物質であることは明らかなので、大気環境の改善のためには欧米と同様に固定発生源からの排出抑制が不可欠」としている。(2)項では、「事業者の自主的な取り組みに委ねると、排出削減に取り組むところとそうでないとろが出て不公平が生じること、また、自動車に対して世界最高水準の規制が行われていること、さらには台湾や韓国でも法規制が実施されていることなどの点から考えて法律に基づく固定発生源からの排出規制が必要」と述べている。
 (3)項に関しては「排出口における濃度規制がベター」と結論している。(4)項については「排出口からガス状で排出される有機化合物全体」と定義している。環境省では、200種類ていどが対象になると推測している。(5)項では、「施設の規模に配慮することが必要で、既設の施設については段階的な基準を設定することが大切」と指摘している。
 (6)項に関しては「VOCの排出が多く、排出抑制技術が開発されている施設を対象とするのが適切」と主張している。(7)項については「全国を対象にすべき」と述べ、また(8)項に関しては「水素炎イオン化検出器(FID)を用いた炭素換算で全VOCを測定するのを基本とすべきだが、新たな測定法の調査・検討も必要」としている。