2003年12月10日 |
大橋・昭和電工社長が会見「中計の進捗に満足」 |
「スプラウト」の目標達成に強い自信示す |
【カテゴリー】:経営 【関連企業・団体】:昭和電工 |
昭和電工の大橋光夫社長は10日記者会見し、同社の中期経営計画「プロジェクト・スプラウト」の進捗状況を語った。 この中で同社長は、「当社は厳しいデフレ環境の中でなお前年比120%の営業利益が今期決算で計上できる見通しとなった。これは、プロジェクト・スプラウトが初年度から狙い通りの成果を上げてきていることの表れと言ってよい。社員に感謝したい」と述べ、中計の進捗状況に満足感を表明した。 来期の展望についても「ハードディスク事業や石油化学事業で引き続き安定した収益を確保していける見通しにあるほか、冷夏の影響等で今期減益となったアルミ部門が立ち直る見込みもあるので引き続き増益を確保していけると判断している。営業利益410億円が目標」と業績の一層の拡大に対する自信を示した。 一方、「円高のマイナス効果や金利の上昇が懸念される」とし「電子材料、無機材料などの成長戦略事業の一層の拡充やHDなど再構築事業のもう一段の改革が必要」と、引き続き強い緊張感を持って取り組む構えを見せた。 大橋社長の主な発言内容次の通り。 ◇今期の通期業績は、売上高6,860億円、営業利益380億円、経常利益265億円、当期利益は100億円となる見通しだ。この結果、余剰金は143億円に大きく拡大、有利子負債は5,316億円へと大幅に縮小する見込みだ。「スプラウト」の初年度の営業利益目標は376億円だったが実際にはそれを上回り、前年比伸び率は20%となる見通しだ。冷夏によりアルミ缶の需要の大幅減が足を引っ張ったが、石油化学部門と無機材料部門がカバーした。対売上高比営業利益率は5.5%で、前年を0.9ポイント上回ることになる。 ◇コストダウンの額は、当初目標を10億円上回る110億円となりそうだ。石油化学部門の合理化が大きく寄与している。一方、この1年の有利子負債の減額規模は495億円となる見込みだ。98年には7,100億円に達していたが、今年末でその25%相当分を減らすことになる。05年には5,000億円まで減らしたい。 ◇こうした業績の改善には、第1期中計の「チータ・プロジェクト」に続いて今年1月からスタートさせた第2期中計「スプラウト」の着実な進捗が大きな効果を上げている。厳しいデフレ環境と予想外の冷夏に見舞われた中で目標以上の営業利益が確保できる最大の要因は「スプラウト」を円滑に実行できてきたからと言える。社員に感謝したい。これで社員にとっても大きな自信となって今後一層の業績拡大に結びついていくと確信している。 ◇今後の「スプラウト」の実行に当っては、「個性派化学の確立」によって収益力を高めていくことを基本に掲げていく。全分門で徹底したコストダウンを進めつつ戦略的に事業を展開していく。特にSMU(ストラテジック・マーケットユニット)戦略によって成長戦略事業を大きく育てていく。 ◇HDについては、販売政策の転換と戦略的提携・買収の推進で外販メーカーとしてトップシェアを確保できるようになった。これからは、用途の拡大と非内製メーカー主体の販売に一層力を入れて基幹事業の一つに育てていきたい。石油化学事業に関しては、03年に30億円のコストダウンを実現したが、05年までにさらに50億円のコストダウンを行いアジア最強のコンビナートに仕上げていく考えだ。 ◇電子・情報部門は、当社の成長のエンジンの役割を担う部門だ。アルミ高分子コンデンサー、化合物半導体、VGCF(カーボンナノファイバー)、半導体用特殊ガス、CMPスラリー(化学的機械的研磨材)、レアアースなどの成長に的確に必要な布石を打っていきたい。 ◇アルミ部門は、最適生産体制の構築と高付加価値化を重要課題に掲げていく。ショウテック、LBP用感光ドラム、熱交換器、コンデンサー用高純度箔、高熱伝導性アルミ板等の育成に特に力を入れていきたい。化学品部門にかんしては、選択と集中によって特殊化学品、農薬・防疫薬などの事業の拡充に注力していく。また、廃プラスチックの原料化プラントの稼動開始によってアンモニア事業のコストダウンも図っていきたい。無機材料では、汎用セラミック研磨材・研削材や人造黒鉛電極、さらにはフェロクロムなどの生産体制の再構築によって全体の改質強化を進めていく考えだ。 ◇「SMUプロジェクト」による成長戦略事業の拡大の例としては、(1)電池材料SMU=市場情報共有と技術融合(2)VGCF=リチウムイオン電池市場の拡大に対応しての設備能力の倍増設の検討(3)酸化チタン=「市場からの発想」による光触媒や化粧品等の新分野の開拓(4)高純度C4F6の本格販売(5)超輝度LEDチップ分野への参入(6)アルミ固体コンデンサー事業の本格展開などが挙げられる。 ◇研究開発費は、成長戦略部門に集中投入していく。配分は、成長戦略事業に全体の50%、基板事業に26%、再構築事業に24%とする考えだ。 ◇コストダウンには引き続き厳しく取り組んでいく。ただ人件費については、これまで実施してきた年収カットをやめ、元のレベルに戻したい。これによって20億円の負担増が発生するが、各種の合理化と分社化でカバーしていきたい。 ニュースリリース参照 http://www.chem-t.com/fax/images/031210syowadenko.doc |