2003年12月16日
中環審、VOC規制問題では審議をさらに継続へ
16日の部会では抑制の手法で意見の一致得られず
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:三菱化学、環境省、日本化学工業協会

 中央環境審議会大気環境部会は16日に第10回会合を開き、揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制について審議した。この日の会合では、はじめに同部会の下部組織である「VOC排出抑制検討会」の坂本和彦委員長(埼玉大学大学院教授)が9日に同検討会が取りまとめた報告書の概要を説明、これを受けて、池上詢部会長(福井工業大学教授)のリードで報告書の内容をベースに活発な論議が行われた。
 
 しかし、VOCの排出抑制が必要との点では各委員の意見が一致したものの、その実現の手法に関しては、法規制が必要と主張する向きと産業界の自主管理で成果を上げるべきだと発言する委員とが合い半ばするかたちとなり、合意が得られないまま審議が"時間切れ"となった。このため池上部会長が、「排出抑制の具体論についてもう少し論議を深めていくべきと考えるので、次回の会合で再度全員で意見を交わしていくこととしたい」と提案し、各委員の同意を得て散会となった。
 
 この問題の最大の焦点は、VOCの排出抑制を新たな法規制によって実施するか、あるいは化学業界や石油業界さらには自動車業界などの産業界が現在取り組んでいる自主管理による抑制に委ねていくかのどちらを中環審が選択し推進していくかという点に絞られる。
 「VOC排出抑制検討会」が取りまとめた報告書(意見書)では、「浮遊粒子状物質や光化学オキシダントに係わる大気汚染が深刻化している」と前置きして、「したがって平成12年度で年間排出量が185万tに達しているVOCの排出を一定期間内に抑制することが重要」と主張。そして、その実現には「欧米や韓国、台湾と同様に法律に基づく規制が必要」と結んでいる。また、抑制の枠組みについても「排出口における濃度規制が適当」「対象とするVOCは、排出口からガス状で出てくる有機化合物を包括的に捉えるべき」--などと細部にわたって言及している。
 
 これに対して、この日の会合では冒頭に満岡三佶・日本化学工業協会環境安全委員会顧問(三菱化学顧問)が「報告書では、最近のVOCの排出量が減少している点や人口一人当たりの量が米国より日本の方が少ない点などが説明されていないのはどうしてなのか」と疑問を投げかけ、次いで「産業界ではかねてから環境省の指導なども得ながら自主管理で様々な有機化合物の排出を抑制してきており、また最近はPRTR制度によっても一段と自主管理の効果が上がるよう努力している。それにもかかわらず、敢えて法規制するというのはいかがなものか」と反論を展開した。また、石油連盟や鉄鋼連盟、さらには自動車業界の代表委員などからも、「一気に法規制に進むのではなく、産業界の自主管理の取り組みとその成果をきちんと評価してから改めて取るべき方法を論議するのがベター」との発言が相次いだ。
 しかし、「じっくり時間をかけて対策を講じていけるだけの余裕はないので法規制が不可欠」との意見もあり、来年1月中に開催が予定されている次回の会合でどのように論議が進んでいくかが注目される。