2004年02月12日
SMのアジアの需給、定修と操業トラブルでさらに逼迫
中国の需要の拡大にどの国も対応できず
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:旭化成

 アジア地域におけるSM(スチレンモノマー)の需給が当面一段と逼迫するのが確実な見通しとなってきた。特に、需要が急拡大している中国では深刻な品不足に陥る需要家が相次ぐことになると見られる。
 
 これは、需要が中国を中心に各地で引き続き大幅な増加を遂げているのに対して、SMメーカーの定修の集中とエチレン装置の運休を含めた操業トラブルの続発とによって供給量が当面大幅に縮小するのが避けられなくなったことによるもの。なかでも大きく影響するのは、予めカウントできない操業トラブルがアジア地域で小規模ながらも連続的に発生している点だ。
 アジア地域では、シンガポール・エルバが1月初旬に続いて2月早々に再び年産58万tプラントを触媒の入れ替え作業のため1週間休止、続いてインドネシアのSMIが9日に同24万t設備をメカニカルトラブルのため急遽運休、さらに今週からは台湾・TSMCとGPPCの両社がCPCの第4ならびに第3エチレン装置の相次ぐ運休によって合計67万tのSM装置の大幅操短に追い込まれている。また、操業トラブルによるものではないものの、旭化成が33万tの新プラントの定修実施期間を当初の予定の3月25日〜4月1日までの11日間から、3月16日〜4月9日までの25日間に変更することにしたことも全体の需給バランスに少なからず影響すると見られる。こうした結果、向こう1ヵ月あまりの間にアジア地域で生じるSMの減産量は約5万tになる見通しだ。 しかも、今年上期は世界各地でSMメーカーの定修が集中的に実施される時期でもある。これまでにない逼迫状態に陥っている中での供給力の大幅な縮小とあって、需要家にとっては極めて深刻な事態といえる。
 
 とりわけ、需要の多くを輸入品に依存する中国の立場は一層厳しいものとなりそうだ。中国のSMの昨年の総輸入量は48%上回って266万tとなった。わが国のSMのトップメーカーの旭化成では、今年の中国の輸入量は前年よりさらに20%増えて320万t強になると予想している。需要量が400万t近くに達するのに対して国産量は770万t弱にとどまるとの見方によるものだ。しかし、日本を含めたアジア諸国で中国の需要の拡大に応じられるところは皆無だ。米国の場合も、設備面では余裕があるものの減量のベンゼンが極度に不足していて大幅減産を余儀なくされており、今後も同じ状態が続くと見られている。しかも、米国からアジア地域へのフレートが暴騰しているのでなおのこと中国への輸出の拡大は無理ということになる。
 もっとも、こうした中でSM各社も現在は深刻な悩みに直面している。各種原料が軒並み高騰していて採算が日増しに悪化しているからだ。このため、各社とも内外の販売価格の修正に懸命に取り組んでおり、これが市場にどういったタイミングで受け入れられていくかが注目される。