2004年03月05日
東北大学と新日鐵化学「ε-カプロラクタム」低温合成に成功
ー世界初、超臨界二酸化炭素を溶媒にー
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:新日鐵化学

 新日鐵化学は5日、東北大学多元物質科学研究所(所長:中西八郎)と共同で、超臨界二酸化炭素を溶媒に用いて、50℃程度の低温度条件下でシクロヘキサノンオキシムからε-カプロラクタムを合成する化学プロセスの開発に世界で初めて成功したと発表した。

 東北大学の横山千昭教授、喬焜助手が中心となり、新日鐵化学が反応プロセスの最適化および実用化のための課題評価などで協力したもので、東北大学と新日鐵化学が共同で特許を出願中。

 ε-カプロラクタムは、ナイロン6の原料となる工業的にも重要な物質で、従来から、様々な合成法が研究開発されており、最近では、400℃程度の高温度下で固体触媒を用いた気相合成法や、380℃程度での超臨界水を溶媒とする合成法などが注目されている。
 
 しかし、いずれも、かなりの高温条件が必要なため、触媒寿命・触媒再生や生成物の分離回収などに技術的課題が残されていた。
 
 今回、新規に開発した酸性を示すイオン性液体を触媒とすることにより、室温付近(50℃程度)という、従来法に比べ、極めて低い温度下での反応を可能とした点が大きな特徴となっている。また、反応生成物であるε-カプロラクタムの抽出分離溶媒として、超臨界二酸化炭素を用いることで、通常の有機溶媒では分離が困難だった、イオン性液体からのε-カプロラクタムの分離回収を、高効率で行えることを実証した。
 
 今後は、今回開発した酸性のイオン性液体を触媒とした場合のカプロラクタム合成経路を明らかにし、イオン性液体の分子構造と反応活性の関係など、反応のメカニズムを解明して、より反応活性の高いイオン性液体の開発を進める。一方、反応装置・分離装置の最適化やプロセス全体の経済性に関する研究をさらに進め、同プロセスの実用化を目指す。

 同社では「前半のシクロヘキサンまでは、従来法と変らないが、硫安を副生しないし有機溶剤を使わないので環境に優しい、低温で合成できるので省エネにつながる。多くの点で画期的な技術といえると思う」と説明しているが、実用化の見通しについては「まだ解決しなければならない問題がいくつか残っているので、いまは答えられない」と説明している。

ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/cgi-bin/fax/search.cgi?CODE=1905