2004年04月08日
ANの今年の世界の需給、引き続きタイトの見通し
アジアでは品不足が一段と深刻に
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:旭化成、旭化成ケミカルズ

 AN大手の旭化成ケミカルズはこのほど、世界全体におけるAN(アクリロニトリル)の今年の需給見通しをまとめた。同社では世界全体の需給は今年も引き続きタイトバランスで推移するのが確実と予想、うちアジア地域については中国の需要の伸びに供給力が追いつかず品不足が一段と深刻になると判断している。
 
 同社では、ANの今年の全世界の需要量を509万1,000tと予想している。昨年の実績を4.1%上回るとの見方である。用途別の見通しは、アクリル繊維向けが256万1,000tで前年の3.2%増、ABS樹脂向けが150万5,000tで同6.5%増、その他向けが102万6,000tで同2.8%増となっている。 
 注目されるのは、地域によって伸び率に大きな差異が生じると予想している点だ。欧州と中東ならびにアフリカのトータルは143万8,000tで前年の1.1%増にとどまり、また、北米と南米の合計は86万1,000tで伸び率はわずか0.1%になると推定している。しかしアジア地域の需要量は279万2,000tで前年を7.0%上回ると予想している。用途の内訳は、アクリル繊維向けが138万7,000tで6.4%増、ABS樹脂向けが107万9,000tで7.9%増、その他が32万7,000tで6.5%増となっている。
 アジアの伸びが他の地域を大きく圧倒すると見ているわけだが、これは中国の需要がさらに大きく増えるとの見方によるもの。同社では今年の中国の総需要量は一気に100万tの大台に乗って103万tに達すると想定している。伸び率は16.5%になるとの予想である。他の国については、台湾が40万7,000tで3.2%増、韓国が45万4,000tで2.6%増、日本が59万1,000tで2.3%減--などと予想、中国が絶対量の面でも伸び率の面でも圧倒的な存在感を示すことになると判断している。
 
 一方の供給量は世界全体で500万t、うちアジア地域トータルはネームプレートベースで242万4,000tになると想定している。対前年比は世界全体が4.2%増、アジア地域トータルが6.1%増になるとの計算だ。世界全体の公称設備能力は599万2,000tだが、米国のAN各社が1月以降原料高による採算悪化に音を上げて大幅減産に踏み切っていることや各地の定修に伴う操業ロス等をカウントすると実生産量は500万tがせいぜいというのが同社の見方である。
 こうした判断に基づく需給バランスは、世界全体では9万1,000tが、またアジア地域トータルでは36万8,000tがそれぞれ不足するということになる。アジア地域の品不足が一段と深刻になるとの見通しだ。しかも、定修ロスの発生は不可避なので不足量はさらに拡大するとも見ている。現在の採算バランスやフレートの高さ等からいって、米国からアジアに玉が持ち込まれる可能性はほとんどないと見られるだけに、わが国のAN各社ともやりくりにこれまで以上に苦労することになりそう。