2004年04月13日
ガスオイルの採用、夏場からわが国でもスタート
エチレンセンター、原料多様化を加速
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:昭和電工、新日本石油、新日本石油化学、三井化学、三菱化学

 わが国石油化学企業の間で、原料多様化の一環としてガスオイルの採用に踏み切るところが6月から7月にかけて相次ぐ見通しとなってきた。政府の関税暫定措置法ならびに租税特別措置法の改正に関する政省令公布を受けてのもので、石化業界は念願だった海外各国と同等のフレキシブルな原料選択権を手にして、原料問題を戦略的に考えていくことになる。
 
 現在、ガスオイルの早期採用準備を進めているのは、三菱化学、昭和電工、新日本石油化学、山陽石油化学、三井化学などの各社。いずれも、例年ガスオイルの国際相場が軟化する夏場から採用したい意向だ。
 
 三菱化学は、水島事業所内の合計19基のナフサ分解炉のうち、エチレン年産6万トン炉をガスオイル専用に使用する計画である。同事業所のガスオイル構成比(依存率)は12%となる。同事務所にはガスオイルを専用に使用できるタンクをすでに保有している強みもある。一方の鹿島事業所は、7万トン分解炉2基がガスオイルに適応可能だが、一部配管が未整備のため実際の活用はもう少し先になりそうだ。

 昭和電工は、大分の17炉のうちの3万トン炉を7月からガスオイルとナフサのブレンド炉として使用していく予定だ。ガスオイルの価格次第で重質NGLを置き換えていくことにしている。これによって、現在24%と比較的高水準の原料多様化率を今後も維持していく。

 新日本石油化学は、合計12炉のうち3炉が重質原料対応型炉なので、6月から順次試験採用していく予定だ。必要なガスオイルは全量親会社から入手できる点が有利といえる。3炉のうちの1炉のチャージ可能量は日量380トン。他の2炉はそれぞれ同500トンという。タンクは現有ナフサタンクを転用する。
 
 山陽石油化学は、水島のエチレン年産50万4,000トンプラントで使用する原料の5分の1を段階的にガスオイルに切り替えていきたいとしている。また三井化学は、千葉のエチレン年産能力10万トンの予備炉を使い、夏場から各種のガスオイルを投入して運転状況や品質のテストを行うことにしている。その結果次第で本採用に移行していく方針だ。
 
 今後の焦点は、今年夏場のガスオイルの市況がナフサ価格を実際にどのていど下回るかだろう。「価格差が40ドルあればガスオイルのメリットは十分出てくる」という見方をしているセンターが多いが、一部には「いや20ドルでも大丈夫」という声もきかれている。いずれにせよ、今後は中国でナフサを大量消化することが確実なだけに、わが国石化企業が原料選択肢を広げておくことの意義は大きい。