2004年05月14日
冨澤・三菱化学社長が会見、順調な財務体質の改善振りを強調
次期中計の策定は、“成長”のシナリオ作りに重点を置いて
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:三菱化学、三菱樹脂

 三菱化学の冨澤龍一社長は14日、記者会見して16年3月期の業績と今期のアクションプランの概要を紹介するとともに、現在進行中の中期経営計画「革進-Phase1」の進捗状況ならびに来期からスタートする「Phase-2」の策定に当たっての基本的な考えも明らかにした。

 この中で16年3月の業績については、「Phase1の最重要テーマである有利子負債の削減を当初の計画を上回るペースで実現して財務体質を大幅に改善できたことが最大の収穫」と述べ、企業体質の強化が順調に進展している点を強調した。
 
 一方、Phase2の策定については「今年末までに詳細をまとめるが、懸案であった事業の再編・再構築はかなり進展してきたと言えるので、Phase2では軸足を“成長”に移して、明確な成長戦略を打ち出し実行を促していくようにしたい」と重要ポイントの一端を披露した。
 
 冨澤社長の発言概要は以下の通り。
○さいわい16年3月期の連結業績は、売上高も営業利益も経常利益もすべて当社の誕生以来最高の規模となった。それにも増して大きな成果を上げたと言えるのは、有利子負債を大幅に削減できたことだ。

 革進-Phase1では、14年3月の時点で1兆544億円に達していた有利子負債を17年3月に8,700億円まで削減するとの目標を立てていた。しかし実際には16年3月に8,697億円に減らすことができた。1年早く目標をクリアしたわけで、これによって当社の財務体質はかなり強化できたといえる。今年もさらに削減して17年3月には8,300億円に圧縮したいと考えている。
 
○Phase1のアクションプランも各セグメントで順調に進展している。まだ多くの課題が残っているので今年度中に着実にクリアしていきたい。

 石化セグメントでは、中国におけるPTA事業の推進、鹿島事業所における原料多様化体制の整備などが主なテーマとして挙げられる。
 
 機能化学セグメントでは、2層DVDやUDOの上市と拡販、フラーレンの顧客開拓、電池機材・電解液設備の竣工、固体照明関連の商品開発--などが重要テーマといえる。
 
 またヘルスケアセグメントでは医薬の国際創薬企業への挑戦、三菱化学BCLの収益力の強化などが、そして機能材料セグメントでは三菱樹脂の中期経営計画の着実な実行、MKVプラテック事業統合効果の早期実現などがクリアすべきテーマの具体例として挙げられる。
 さらに石化セグメントで付け加えれば、原料ナフサ価格が予想を大きく上回るレベルに上がりつつあるので樹脂価格への転嫁も緊急課題の一つに浮上してきている。

○一方、来年からスタートする次期中計のPhase2については、2010年のあるべき姿を念頭に置いた革進策を策定したいと考えている。今年末に具体策を取りまとめるが、ポイントは(1)グループ経営のあり方についての議論(2)事業ポートフォリオ改革の見直し(3)成長を支えるR&TDの戦略(4)投融資戦略と財務体質の改善--の4点に集約できると判断している。

(1)のテーマでは、セグメントの括り・グループ会社の再編、あるいは持ち株会社の深化などについての議論が必要と考える。

(2)の項目では、事業の再編・最構築がかなり進展したので、これからは軸足を“成長”に置いて育成・集中事業のシナリオ作りや成長戦略の明確化に取り組むことが大切と言える。

(3)の課題は、成長を支えるR&TDと事業戦略の整合性を高めていくことと、的確なマネージメントが重要となろう。

(4)の項目では、事業領域別の配分と地政的事業展開および投資の2点についての的確な判断と実行計画の策定が大切と考える。

○最近は、中国の経済成長が当初の予想以上に長期にわたって持続するとの見方が広がっているが、私はかならずしもその見方に組しない。激しい国際生存競争の中で生き抜いていくための厳しい企業努力の積み重ねがまだまだ必要だ。

 ついては、先ずは自前でできる様々な合理化策を着実に実行に移して経営の効率向上に全力を投入することから始めるほかないと考える。鹿島事業所における原料多様化体制の整備などはその一つだ。むろん、アライアンスについても十分検討していく。