2004年05月18日
中西・三井化学社長が会見、04中計の詳細を説明
「中国への進出等で海外事業を大幅に拡充」
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:三井化学

 三井化学の中西宏幸社長は18日に記者会見し、07年度を最終目標年度とする同社の中期経営計画(04年中計)の詳細を明らかにした。全体像の概要はすでに発表済みなので、この日は、海外事業の展開や新製品の開発など04中計の中でも特に重要な意味を持つと言える施策について詳細を披露した。
 
 うち海外事業については「アセアン諸国でかねてから積極展開している石化ビジネスの拡充に加えて中国でもPPコンパウンドやBPAの事業を立ち上げるなどで、グループ全体の売上げと営業利益に占める海外比率を大幅に引き上げていきたい」と述べ、07年度における目標を売上高では連結売上高比38%に、また海外生産営業利益では連結営業利益比25%にそれぞれ設定していることも披露して、海外事業の拡充に対する意欲が極めて旺盛なところを示した。

 また、新製品開発に関しては「当社が最も得意とする触媒科学を支えに機能性材料分野を中心に相次いで新製品を開発・上市していく考え」と語り、次いでフィルムタイプの次世代PDP用光学フィルターやLCD用高機能反射シートなど最近における独自の新製品の開発例などを詳細に紹介したあと、「こうした新製品の開発・上市によって07年度の機能性材料部門の売上げのうちの14%、03年度からの増加売上高の40%がそれぞれ新製品で占められるように持っていきたい」と技術力による新市場の開拓に寄せる意気込みを披露した。
 
 中西社長の発言要旨は次の通り。
○04中計のキーワードはすでに紹介しているように「量的拡大から質的拡大への転換」であり、事業の選択と集中、機能性材料分野の拡大・成長、石化・基礎化分野の収益力強化--の3点が重要課題として挙げられる。

○こうした課題をきちんとクリアすることで07年度に1,000億円の経常利益を確保するというのが04中計の狙いだが、そうした04中計の中で特に重要な意味を持つものの一つは海外事業の展開だ。海外の売上げは順調に伸びていて03年度は連結売上高の32%を占めるまでになった。これを05年度には35%に、そして07年度には38%まで引き上げたい。また、海外生産の営業利益については07年度の連結営業利益の25%を占めるよう持っていきたい。 

○これまでのアセアン諸国に加えて中国に対してもリスクを自らマネージメントできるプロジェクトを対象に積極的に進出していく。05年春に広東省・中山で年産1万5,000t設備の営業運転開始を予定しているPPコンパウンド、06年7月に上海で同12万t設備の稼動を計画しているBPA、さらには08年に江蘇省で同60万t能力のプラントの立ち上げを予定しているPTAなどが当面実現が確実なプロジェクトだ。

いずれの製品も中国でこれからなお大きく伸びていくことが確実視されているので、当社としては中国でも強力な存在感を示していけることになると確信している。PPコンパウンドの場合は、自動車向けに現在も世界で19%の販売シェアを確保してバセルに次ぐ第2位の地位を占めているが、07年には21%まで拡大したいと考えている。販売数量は現在の年間38万を50万t弱に拡大していきたい。

○出光グループとの提携については、先ずはポリオレフィン事業の統合によってPP事業のプレゼンスの強化とPE事業の構造改革の加速を図っていくことになる。これに続いては、誘導品需要に応じたオレフィン構造の改革、プロピレン・アロマの供給力の強化、原料多様化・設備活用によるコストダウン--の3項目について具体策を双方で煮詰めていく。

○04中計では新製品の開発も極めて重要な課題の一つと言える。当社の強みは、新製品の開発を支えるに必要な優れた触媒科学を十分蓄積できている点にある。これを武器に、機能性材料を中心に新製品を相次いで開発していきたい。07年度には、機能性材料分野全体の売上げに占める新製品の売上げ比率を14%に持っていきたい。03年度から増加する売上げの40%が新製品で占められるようにしたいと考えている。

○すでに開発に成功して近く本格商業化できるものもいくつかある。フィルムタイプの次世代PDP用光学フィルター(登録中の商標はフィルファイン)もその一つだ。ガラス基板タイプ(フィルトップ)に加えてラインアップしていこうと考えているもので、軽く、薄く、より鮮明な点が大きな特徴。内外のユーザ−から採用の内定通知を受けており、今年10月から本格納入を開始できる見通しにある。ガラスタイプと合わせて07年度には270億円を売り上げるようにしたい。

 また、LCD用高反射シート(ホワイトレフスター)も大きく成長すると期待している。反射率が98%と高く液晶画面が明るい点と寿命が長い点が大きな強みで、国内と海外のそれぞれ2社で採用されている。07年度の売上げ目標は14億円に置いている。

○さきに述べたように、当社は触媒科学を得意の技術戦略領域としており、内外の有力大学や学者、学生等との間でグローバルなサイエンス・ネットワークを構築している。今年11月にはフランスのルイスパスツール大学で「新しい機能を発現させる先端材料」のテーマでシンポジウムを開催する。また来年3月には日本で「機能性材料の創出を目指したグリーン触媒最前線」をテーマに触媒科学国際シンポジウムの第2回会合を開く。今後も幅広いネットワークを生かして触媒技術のレベルアップを図っていきたい。