2004年07月05日
日立化成、次世代半導体レンズ用フッ化カルシウム単結晶を開発
直径330ミリの大型品を高透明、高効率で製造可能に
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:日立化成工業

 日立化成工業は5日、独自開発の真空ブリッジマン法により、優れた特性を持つ次世代半導体リソグラフィーレンズ用フッ化カルシウム(CaF2)単結晶の開発に成功したと発表した。開発品は、直径330ミリの大型かつ高透明であり<111> <100> のいずれの結晶方位でも高効率で製造可能としている。

 半導体のデザインルールは、2004年には90ナノメートル・ノードの量産が開始され、100を切る段階に入った。このような超微細配線形成を実現するため、光リソグラフィーのレーザー光源としては、従来のKrF(フッ化クリプトン)からArF(フッ化アルゴン)へと短波長化が進み、これにあわせてレンズの材料も、従来の合成石英から、真空紫外領域での透過率が優れた大型CaF2単結晶が、結晶方位〈111〉〈100〉で必要とされている。しかし、大型CaF2単結晶を高効率で育成することは非常に困難とされてきた。

 CaF2 単結晶の製造の主な課題としては、多結晶化しやすいことと、優先成長方位の存在が挙げられてい。CaF2 単結晶の製造に一般的に用いられる真空ブリッジマン法は、装置構造が単純で結晶の大型化が容易という利点がある一方、直接るつぼに接した状態で単結晶が成長するため、多結晶化しやすいという欠点があった。また、CaF2 単結晶そのものに<110>方向に成長しやすい優先成長方位が存在するため、育成方位制御も困難だった。

 同社では、PET(陽電子放出断層撮影)装置用のGSO 単結晶の開発を通じて培ってきた高融点単結晶育成技術、大型単結晶育成技術、シミュレーションによる炉内温度分布解析技術などの単結晶育成技術を生かして開発に取り組み、これらの課題をクリアした真空ブリッジマン法を確立した。

 同社が確立した真空ブリッジマン法では、多結晶化のほぼ完全な防止と結晶成長方位の
完全な制御を実現し〈111〉〈100〉〈110〉の全結晶方位について、直径330ミリメートルの大型CaF2 単結晶を高効率で作製することに成功、このほど安定供給に向けた製造技術を確立した。さらに、内部透過率99.7%以上の高透明も実現した。

 同社は、研究開発資源を集中的に投入してスピーディーに製品化を図る「戦略開発10
テーマ」を定めており、次世代半導体リソグラフィーレンズ用CaF2 単結晶はその一つ。今後は、優れた特性と高効率生産による価格競争力を武器にして、サンプルワークを推進していく。

ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/fax/images/0705hitachikasei.pdf