2004年07月15日
産総研が有機ELの発光素子を新方式で試作
太陽光、室内照明光を取り込む「明順応発光素子」
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:大日本印刷、凸版印刷

太陽光や室内照明などの外光を取り込み、より明るく光る「明順応発光素子」を使った有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイが開発される見通しとなった。産業技術総合研究所の光技術研究部門が千葉・幕張メッセ(16日まで)の「インターオプト'04」に試作機を展示、機能、プロセスなどを明らかにしたもので、2〜3年後の製品化を目ざしている。

明順応発光素子は現在、低分子有機ELを蒸着してつくられているが、今後はインクジェット方式による高分子有機ELの製作も手がけたいとしており、大日本印刷、凸版印刷などの印刷業者から強い関心が寄せられている。

新しい発光素子の研究開発で、有機色素に電荷を注入することで発光する素子が注目されるなかで、産総研は有機感光体層(シリコン不要)による光から電子への変換、そして有機EL層による電子から光への変換を3層の有機色素膜で行う方式、明順応発光素子を開発した。

この素子に有機感光体が最もよく吸収する赤〜近外光を照射すると、低い印加電圧で発光が得られる「光スイッチングモード」ばかりでなく、高い印加電圧時にはEL強度が千から万倍に増加(光増強モード)するという。たとえば1センチ角の発光部所を2つ持つ素子に、各6V、12V印加し、780nmのレーザ光を照射した場合、その当った部分は明るさが12Vで最大1万倍にもなり、高輝度の発光をするとしている。

産総研では、この明順応発光素子を2〜3型のディスプレイに応用する一方、面型発光体として低消費電力の照明や軽くて柔軟性、耐衝撃性に富む特性を生かし温室の屋根に利用していく方針である。産総研のTEL/029-861-6306。

なお、産総研の明順応発光素子は透明電極(ITD)を最上部に置き、光電変換層(有機感光体)、有機EL層、金属電極を重ねる構造。発光色素を塗りわけ(マスク蒸着)て、赤、緑、青色をだしている。

○参考記事
2004年07月13日
エプソン、光データ通信向け面発光型半導体レーザ「VCSEL」
http://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile.cgi?CODE=14045

ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/cgi-bin/fax/search.cgi?CODE=2392