2004年07月15日
中国の設備投資規制、「PVCの新増設計画」に障害
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:東ソー

 中国では経済の成長に伴い、PVCの需要が年々増大している。これを受け、最近の集計では計画又は検討されている05年から08年の間の能力増は700万トンに達する。しかしながら、ここにきて、これらの新増設計画に障害が出てきた。

 第1は国家発展改革委員会(NDRC)による規制で、NDRCは既報の通り、経済の過熱化を押さえるため、石油化学、繊維、鉄鋼、アルミ、建材、機械、医薬その他の産業で小規模設備の新設規制の通牒を出した。

 塩ビ関連ではEDCベースPVCでは年産20万トン未満、アセチレン法PVCでは年産8万トン未満、クロルアルカリについても年産10万トン未満の設備の新設は認めないこととなった。(2004年5月19日付CNTニュース=海外コーナー参照)

 東ソーは、広州市南沙経済開発区で「東曹(広州)化工有限公司」のPVC年産11万トンのプロジェクト申請を行った。これは本通牒の対象(20万トン未満)となる唯一の海外からの投資だが、現地からの情報ではまだ認可が下りていない。

 他の多くのメーカーは今のところ、この通牒がどのように適用されるのか様子待ちの状況だが、山東恒通化学のように、既に年産4万トンのアセチレン法PVCを稼動済みだが、この通牒が既存プラントにまで適用されるのを恐れて10万トンへの増設を急ぐ企業も出てきた。
 
 場合によっては、以前の日本の30万トンエチレンのように、過熱化を押さえるための政策が逆に過熱化を促進する可能性もあるとの見方もある。

 第2は電力不足で、特に南部及び東部で電力不足が深刻な状況だが、北京など北部にも広がってきた。経済の急速な発展で電力需要がこの10年間で2倍以上となったのに対して、供給がついていかないためで、産業界にも電力制限の影響が出てきた。6月には産業向けの電力料金が平均で約6%アップした。
 
 塩ビの場合はプラント自体の停電停止の可能性に加え、原料のアセチレンや塩素をつくるカーバイドプラントや電解プラントが電力不足で減産を強いられ供給不足となり、また電力料金アップの影響も受けることとなる。黒龍江省のある企業は、アセチレンの調達が難しいとしてPVC新設を再検討していると報道されている。今後輸入VCMへの切り替えが増えるとVCM価格のアップのおそれがある。

 電力不足は短期間に解消する見込みはなく、この問題はPVCプラントの新増設に影響を与えることとなる。中国経済の急速な発展の矛盾がいろいろなところに出てきた形で、今後の動向に注意が必要である。 (この項上海発=CNT特約)