2004年10月14日 |
苛性ソーダの需給が世界全体で急逼迫 |
価格も急騰、米国ではスポットが330ドルに |
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品 【関連企業・団体】:旭化成、旭化成ケミカルズ、東ソー |
苛性ソーダの需給バランスが世界全体で急逼迫してきた。供給能力が米国の電解プラントの相次ぐ閉鎖によって縮小する一方で需要が米国、中国、豪州の各国で急増してきたことによる。うち、9〜10月のアジア地域に関しては、台風16号と18号によってわが国で電解プラントの操業休止が相次いだことも逼迫に輪をかけることになった。 このため苛性ソーダの価格は各地で急騰。今週明けの米国ガルフコーストのスポットもののFOB価格はトン300〜300ドルに跳ね上がり、アジアでも10月の引き合い価格は同240〜250ドルに急上昇している。しかも、今後需給はさらに逼迫の度合いを強めていくというのがわが国の苛性ソーダメーカーや大手商社に共通した見方となっている。最近の各地の活発な引き合い状況から推すと、需要家の間でもこうした見方が急速に広まりつつある様子が窺える。こうした点からも、国際市況がコントラクトものも含めて各地でなお一層騰勢を強めていく公算はかなり高いといえそう。 わが国の苛性ソーダメーカーや大手商社の調査によると、過去3年における米国の電解プラントの閉鎖に伴って縮小した苛性ソーダの生産能力は、米国全土で178万,6000トンとなった。従来の総能力は1,471万6,000トンであったので、縮小率は12%ということになる。紙・パルプのECF化の進展による塩素需要の縮小と天然ガスの高騰によって操業を断念するところが出始めたためだ。注目されるのは、閉鎖設備全体のうち85万5,000トンが西海岸の企業の設備で占められている点だ。西海岸エリアの総設備規模は100万トンであったが、一気にその85%が消滅したことになる。しかも残る15万トン設備も早晩閉鎖されるとの見方が有力となっている。 ところがその米国内の苛性ソーダの需要は、景気の回復に歩調を合わせて着実に拡大しており、今年上半期の総需要量は前年同期を8%上回って586万4,000トンとなっている。ただし、需要の伸びの多くはカナダ、日本、韓国、台湾の各国からの輸入の拡大でカバーされたと見られている。極東3カ国からの製品は専ら西海岸で陸揚げされている模様。こうした結果、現在の米国は大幅な入超国に転じており、今後は入超比率がさらに拡大していくと見通しにある。今年の総輸入量は65万トンていどになると見る向きが関係筋には多い。 米国以上に需要が伸びているのは中国だ。ある大手苛性ソーダメーカーでは、今年の中国の年間需要量が991万1,000トンになると予想している。昨年の総消費量は901万トンであったので、今年の伸びは10%ということになる。その中国にとっての大きな悩みは、電力不足が一段と深刻な様相を呈してきたため自給体制を維持できなくなりつつある点だ。現に今年に入ってからは徐々に出超国から入超国に転じ、上期トータルの貿易バランスはわずか1,000トンながらも初の入超となっている。現在の需要の伸びや電力事情から判断すると、下期には入超規模が大幅に拡大する可能性が強い。増設の計画は多いが、最近の中国政府の投資抑制策の強化や電力の需給見通しから見て実現の確率はかなり低いというのが関係筋の多くの見方となっている。 しかし、わが国の苛性ソーダ工業にとって、より大きな係わりを持つのは豪州の需要の急拡大振りだ。アルミナの対中国輸出が大幅な伸びを遂げていることによるもので、今年の需要量は昨年の135万トンから150万トンに拡大すると予想されている。うち50万トンは日本からの輸入で賄われることになる見通しだ。東ソーや旭化成ケミカルズでは来年以降はさらに需要が増え、07〜08年の需要は200〜210万トンになると予想している。こうした見通しに沿って、大口輸出企業の東ソーでは来年上期分の対豪州契約価格を大幅に引き上げる構えにある。今年下期分はFOBトン当たり125ドルだが、来年上期分は最低でも同200ドル台に乗せたい考え。極力、01年上期の250ドルに戻すようにしたいという。11月中旬からの交渉の行方がいまから注目される。 |