2004年10月26日
経産省化学課、石井教授の「NHPI」触媒実用化に研究組合
画期的な省エネ、コスト低減プロセス支援へ
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:ダイセル化学

 経産省化学課は、関西大学工学部の石井康敬教授らが開発した「NHPI誘導体触媒技術」を、省エネ型で温暖化防止効果が大きく、コスト競争力のあるプロセスと評価、業界各社に実用化のための研究を呼びかけていくことにした。来春にはマルチ・パテント方式による研究組合を立ち上げる。事業費として来年度予算に1.5億円(補助金)を要求中だ。
 
 石井教授らが開発した触媒技術は、合成樹脂や合成繊維の原料となるカルボン酸、アルコールなどの含酸素化合物の製造に高効率酸化触媒(NHPI)技術を適用し、総合的にプロセスコストを低減させるというもの。2003年度のグリーン・サステナブル・ケミストリー表彰で文部科学大臣賞を受賞した。
 
 例えば、ナイロン原料のアジピン酸は現在、シクロヘキサンから2ステップ反応で生産しているが、これがソフトな条件のもと、1段で合成できる。高熱の亜酸化窒素が副生しないため省エネ効果が大きい。また、トルエンから常温・常圧で安息香酸を製造することも可能になる。イソブタンの酸化では82%という高収率が達成できる。
 
 わが国の化学工業は現在、多種多様な製造プロセスを導入しているが、60%以上は酸化反応プロセスが占めている。また、そのほとんどは高温・高圧を必要とするエネルギー多消費型プロセスといわれる。化学課では、この「NHPI」触媒を使った技術を既存製法に適用した場合、約20〜30%のエネルギー削減効果があり、およそ2,500億円の経済効果を生むと推定している。
 
 このため同課では、「高効率酸化触媒を用いた環境調和型化学プロセス」として、今後業界各社の実用化に向けた研究を積極的に支援していくことにした。実施期間は2005年度から08年度までの4年間とし、事業費は総額20億円(補助率=2分の1)を見込む。基本特許は現在ダイセル化学工業が実質所保有しているが、これを新たに設立する研究組合にプールする。参加企業はそれぞれこの特許を利用して、実用化研究に取り組むことができる仕組みだ。同課では近く組合参加企業の募集を開始する。