2004年11月30日
「SPEED'98改訂WG」が最終案まとむ
野生生物の観察など7項目が重要課題と指摘
【カテゴリー】:環境/安全
【関連企業・団体】:住友化学、環境省

 環境省の委嘱を受けて同省の「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」の改訂について検討を重ねてきた「環境ホルモン戦略計画SPEED'98改訂ワーキンググループ」は30日に第10回会合を開き、同WGの最終案について審議し、結論をまとめた。
 この日に取りまとめられたのは「化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針について」と題する意見書。内容は「これまでの取組み」と「今後の方向性」の2章で構成され、加えて、環境省のこれまでの取組みに関連した主な出来事や環境実態調査結果、さらには主要研究業績など様々なデータも付記している。
 
 最大のポイントである「今後の方向性」については、「(1)野生生物の観察(2)環境中濃度の実態把握及び暴露の測定(3)基盤的研究の推進(4)影響評価(5)リスク評価(6)リスク管理(7)情報提供とリスクコミュニケーション等の推進--の7項目が化学物質の内分泌かく乱作用問題に関する今後の対応策の基本的な柱」と指摘して、それぞれの項目別に取るべき具体策を詳述している。
 このうちの(4)影響評価に関しては、「全ての化学物質の中から“化学物質の規制の対象となっている物質”“国内での使用実態がある物質”または“国際機関等の公的機関が公表した報告書等において内分泌系への影響、内分泌系を介した影響等が懸念された物質”を対象に内分泌かく乱作用に関する検討を考慮する必要がある物質を選定、そして暴露の可能性があると特定された場合は文献情報によって影響・事象情報の評価を行って試験対象物質を選定して試験を実施し、その結果を評価するようにするのが妥当」との見解をまとめている。そして評価内容については「“ヒトにおいて内分泌かく乱作用が推察される物質”“ヒト以外の生物種において内分泌かく乱作用が推察される物質”“現時点では明らかな内分泌かく乱作用が認められなかった物質又は現時点では暴露の可能性が低く、現実的なリスクが認められなかった物質”--に振り分けていくこと」を提案している。
 現在の「SPEED'98」では、最初に「内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質」として合計67物質(後に65物質に変更)をリストアップして個別の対応策を展開する手法を取っている。このためリストアップされた物質が需要家や一般市民にブラックリスト物質として受け止められて混乱する事態がしばしば生じている。
 今回の同WGの意見書では、そうした誤解と混乱の発生を避けるため、特定物質を予めリストアップする方法は取らないよう提案しており、この点は一つの前進ということができる。ただし、この日の会合で山口孝明委員(住友化学レスポンシブル・ケア室勤務)も指摘したように、影響評価の対象に“公的機関が公表した報告書等で影響等が懸念された物質”を取り上げることにした場合は、SPEED'98の物質リストの再現になりかねないとの懸念が持たれるなど、さらに論議が必要といえる項目もいくつかある。
 なお、この日のWGの最終案は12月24日に開催される「内分泌攪乱化学物質問題検討会」に環境省から報告される。