2005年03月28日
世界のAN需給バランス、今年は再び品不足に
需要は着実に増加、供給力は前年横並び
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品(海外)
【関連企業・団体】:旭化成ケミカルズ

 世界第2位のAN(アクリロニトリル)メーカーである旭化成ケミカルズの調べによると、今年の世界全体のANの需給バランスは、総供給量が総需要量をわずかながらも下回って再びショートバランスに転じる見通しとなった。中国を中心としたアジア地域の需要が引き続き順調に拡大するのに対して、大手メーカーの一角を占める米・スターリング・ケミカルスの大幅操短等もあって総供給量がほぼ前年並みにとどまる公算が濃厚となってきたことによる。
 同社の予想通りに推移すると、ANの世界全体の需給バランスは最近の5年のうち04年を除く4年がショートバランスとなる。

 注目の中国のバランスについては、BP/上海石油化学(Secco)が新設した年産26万トンプラントが第2・四半期に稼動を開始するものの、それでもなお04年を上回る規模の輸入が必要になるとの予想になっている。
 
 同社の調査によると、ANの04年の世界全体における需給バランスは、総需要量が506万7,000トン、総供給量が509万1,000トンとなった。需要量が前年を3.1%上回ったのに対して供給量が4.2%増となったためわずか2万4,000トンながらも供給量が需要量を上回った。供給が需要を上回ったのは4年振りのこと。
 うち中国のバランスも、ごくわずかながら需要を供給(国産プラス輸入)が上回った。需要が前年比8.0%増の95万5,000トンになったのに対して供給量が8.5%増の95万9,000トンとなったことによる。供給のうちの輸入は31万8,000トンで、前年を16.5%下回った。国産が27.4%増えたことに伴うもの。
 
 一方の今年の世界全体の見通しは、総需要量が前年比2.0%増の516万8,000トン、総供給量が0.5%増の511万7,000トンとなっている。差し引き5万1,000トンの供給不足をきたすとの予想だ。
 需要の内訳は、アクリル繊維向けが前年比0.3%増の262万7,000トン、ABS向けが5.9%増の162万1,000トン、その他向けが0.5%増の102万トン--となっている。アクリル繊維とその他向けはほぼ横並びにとどまるが、ABS向けが前年と同様の安定した伸びを遂げるとの見方なのである。
 世界全体のうち需要が最も大きく伸びるのは中国で、前年を12.4%上回って107万3,000トンに達するというのが同社の予想。日本の58万5,000トン(前年比0.2%増)や米国の57万3,000トン(同9.3%減)を大きく引き離し、欧州全体の109万5,000トン(同0.5%増)と肩を並べる規模となるとの見方である。うちアクリル繊維向けが70万1,000トン(同11.4%増)、ABS向けが27万4,000トン(同16.1%増)、その他が9万8,000トン(同8.9%増)--になると推定している。
 対する供給量については、国産73万5,000トン(同14.7%増)、輸入33万8,000トン(同6.3%増)、輸出9万2,000トン(初の輸出)の計116万5,000トン--と予想している。昨年縮小した輸入が、Seccoの26万設備が稼動するにもかかわらず再び拡大すると判断している点が注目される。もっとも、第1・四半期のバランスは、アジアにおける大口サプライヤーである旭化成ケミカルズ、台湾・FPC、韓国・泰光産業の3社が相次いで大型ANプラントを定修のため運休するので、極端なタイトバランスとなる見通し。米・スターリングケミカルスが36万トン設備を2月10日以降に再度運休していることもあって欧米品によるカバーも困難と見られている。