2005年05月11日
旭化成ケミ、今期の投融資を一気に700億円に拡大
藤原社長が会見、高付加価値品事業の拡充にも意欲示す
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:旭化成ケミカルズ

 旭化成ケミカルズの藤原  社長は11日に記者会見し、前期(平成17年3月期)の決算と今期(同18年3月期)の業績予想ならびに当面の重点施策について概要を明らかにした。

 この中で同社長は当面の重要経営課題として、(1)高付加価値・高収益型製品の構成比率の拡大(2)原料の自給率の大幅な引き上げ(3)原料高騰分の製品価格への円滑な転嫁--の3点を挙げ、着実に狙いをクリアしていくことによって企業体質を大きく強化したい考えを強調した。

 原料自給率については、プロピレンやベンゼンの自給率を3年後に現在の40%から80%に引き上げる考えを披露した。また、そのための投下資金を含めて今期の投融資額を前期の2.8倍に相当する700億円に拡大する計画であることも明らかにした。

 同社長の発言概要は以下の通り。
○17年3月期の業績は、売上高が前期比22.9%増の5,574億円、営業利益が同146.4%増の408億円、数理計算上の差異を除いた場合の営業利益が同57.9%増の352億円、売上高営業利益率が3.7%。数理計算上の差異を除いた率が1.4%となった。増収の要因としては、SMやANなどの増設もあっての拡販効果と原料価格の上昇分の製品価格への転嫁の2点が挙げられる。販売額の増額には、中国をはじめとしたアジア向け輸出の拡大が大きく寄与した。営業利益の増加にも少なからず貢献したといえる。
○設備投資額は計画ベースで330億円、完工ベースで248億円となった。主なものとしてはMF紡糸・組み立てラインの新設、韓国デラグラス社におけるMMAシートの新設、SMの設備更新、ポリアセタールの新設、ANの能力増、ハイポア設備の増強--などが挙げられる。
○今期の業績としては、売上高6,330億円、営業利益365億円、数理計算上の差異を除いた営業利益350億円、売上高営業利益率5.8%、数理上の差異を除いた比率5.5%--等を目標に掲げていく。
○こうした目標をクリアしていく要件の一つとして欠かせないのは、いまなお継続している各種原料価格の上昇分を製品価格にきちんと転嫁していくことだ。需要家各社のご理解を得て遅滞なく実施していきたい。また、現在40%どころにとどまっているプロピレンやベンゼンの自給率を早急に引き上げていくことも重要な課題だ。3年計画で自給率を80%ていどまで引き上げていきたいと考えている。ついては、αプロセスとΩプロセスを国の内外で本格的に立ち上げたい。これによって、プロピレンもベンゼンもともに現在より年間10万トン多く自給できる体制を構築したい。
○このための投資も含めて今年度は合計700億円の投融資を計画している。プロパン法によるANの製造プロセスの実証プラントの建設も今年度中に実施したい。また、水島コンビナートのインフラの整備にも着手したいと考えている。このための所要資金はおよそ100億円になると試算している。
○一方、中期の展望に立っての重要課題は、すでに何度かお話しもしている高不付加価値・高収益型製品の事業の拡充だ。ついては、得意としている精密ろ過膜やリチウムイオン2次電池用微多孔膜などの高機能製品の場合も、素材のビジネスにとどまっていないでさらに一歩踏み込んでシステム化していくようにすべきと考えている。ポリエチレン事業の場合も、独自の高付加価値品種の開発・上市によって安定的に収益を確保していけるようにしたい。
○もう一つ付け加えさせてもらえば、PSジャパンと大日本インキ化学工業とのPS事業の統合計画が公正取引委員会から認められなかった点はまことに残念といわざるを得ない。しかし現在の体制のままで厳しい国際生存競争を勝ち抜いていくのは至難だ。新グレードや新技術の開発が不可欠なので、一緒に取り組んでいけるところと緊密に連携しながら狙いを実現していきたい。それが、多くの需要家の期待にも沿うことになるはずだ。