2005年05月30日
アジアでSMの定修と生産調整が相次ぐ
当面の需給バランスの悪化は回避の公算
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品(海外)
【関連企業・団体】:なし

 旭化成ケミカルズなどSM(スチレンモノマー)メーカー筋の調べによると、ここにきてアジア地域でSMメーカーによる定修が相次いでスタートすると同時に生産調整に乗り出すところも増えてきた。このため最近のSM業界の間では、当面のアジア地域におけるSMの実生産量が3割前後縮小することになるとの見方が台頭してきている。
 
 注目されるのは、以前から計画が決定済みの定修に加えて予定外の生産調整に入るところが各地で相次いでいるとされている点だ。最大の消費国である中国(香港を含む)の需要が当初の予想に反して前年を大きく下回る状態が続いていることに対応して減産に乗り出すところが増えてきたものと見られる。この状態が維持されていけば、アジア地域の需給バランスの崩壊は食い止められることになろう。
 
 SM業界筋の調査によると、現在の定修によってSMプラントを運休中の企業は、三菱化学(年産能力39万トン)、韓国・三星綜合化学(同35万トン)、同・BASF(35万トン)、同・SKエバーテック(同30万トン)、同・YNCC(同14万トン)、インドネシア・SMI(同14万トン)、シンガポール・エルバ(同56万トン)--といったところ。合計の設備能力は223万トンとなる。生産するSMの大半を中国に振り向けてきた韓国勢が多くを占めている点が現在進行中の定修の大きな特徴と言える。
 これらに併行して、韓国・LG、同・東部、タイ・TPI、中国・BP/SECCO、さらには日本の複数のSMメーカーが相次いで減産に踏み切っている模様。
 日本スチレン工業会が昨年まとめたデータによると、05年のアジア地域におけるSMの総設備能力は1,060万トンとなっている。対する需要は昨年が約1,200万トン、今年は1,250万トンになると予想されている。完全な供給力不足になるという予想であり、不足分は欧米や中東からの供給でカバーされると見られていた。ところが、中国の輸入が今年に入って激減してきたため逆に需給ギャップが発生、市況も大幅に下降しており、先行きの需給バランスと市況に不安感を抱く関係者が増えていた。しかし、現在のような定修と自主減産がしばらく同時並行して続けば、当面の需給と市況の悪化は回避できるのではないかと見る向きが同業界の間に増えてきている。