2005年05月31日
タカラバイオ、遺伝子治療用の閉鎖系遺伝子導入システム開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:タカラバイオ

 タカラバイオ(加藤郁之進社長)は31日、レトロウイルスベクターの保存安定性を飛躍的に向上させることに成功したと発表した。レトロネクチンをガス透過性プラスチックバッグ内面に固相化し、これに遺伝子導入用のレトロウイルスベクターを結合させ、ベクター産生細胞に由来する不純物質を洗浄除去しておくことにより、4℃におけるレトロウイルスベクターの保存安定性を向上させる。

 体外遺伝子治療で広く使用されているレトロウイルスベクターは、4℃での半減期が3〜4日と短いため、通常、超低温フリーザーで保存され、遺伝子導入直前に融解し使用されており、その取り扱い操作が煩雑だった。しかし、レトロウイルスベクターを、固相化したレトロネクチンに結合させておくと、ベクターの活性が1週間後でも80%以上保持されていることを発見した。

 同社は、レトロネクチンと遺伝子治療用ベクターを固相化したプラスチックバッグを供給することにより、臨床現場でリンパ球などの標的細胞を加えるだけで、外界に曝されることなく、細胞への遺伝子導入を効果的に行なうことが可能になるとしている。

 同社はこの研究成果を6月1日から米国セントルイス市で開催される第8回米国遺伝子治療学会で発表する。

 同社はこの遺伝子導入システムの利点として、以下の2点をあげている。
(1)高い遺伝子導入効率が得られるレトロネクチンを固相化したバッグを使用するため、バッグに標的細胞を加えるだけで直ちに遺伝子導入を行うことができる。
(2)容器としてガス透過性培養バッグを用いることにより、レトロウイルスベクター及びレトロネクチンを、閉鎖系を保持したまま輸送することが可能。

 なお、これらの利点を活用して、将来的にはウイルスを固定化した「レディー トゥ ユーズ」な遺伝子治療用容器を全国の遺伝子治療実施機関に安定供給するができるようになるとしている。