2005年06月21日
タイの水不足、現地の石化に深刻な影響
来週にも大幅な給水制限で運休が相次ぐ見通し
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品(海外)
【関連企業・団体】:なし

 わが国のエチレンセンター筋が入手した情報によると、タイの水不足はマプタプット地域を中心に一段と深刻な様相を呈してきており、このため来週早々にもタイ政府が同地域の石油化学各社向けの給水を40%カットする措置に踏み切る公算が濃厚となってきた。
 
 現在もセンター会社の一つのROCが、政府の要請を受けてエチレン年産80万トン能力プラントの操業率を従来の100%から90%に引き下げているが、40%の給水制限が実施されると保安上の最低操業率の維持も不可能となる。このため同社では、今年11月に予定していた同プラントの定修を7〜8月に前倒しすることを検討している模様。
 同地区では、このROCのほかにも3社合計4基のエチレンプラントと各種誘導品設備が稼動中。3社のエチレンの設備能力は、TOCが2基トータル68万5,000トン、NPCが46万トン、TPIが36万トンで、ROCを合わせた総設備能力は230万5,000トンとなっている。
 
 40%の給水カットが実施されると、これらのエチレンプラントのうちTOCの30万トン能力の第2号機とTPIの36万トン装置が操業停止に追い込まれ、NPCの46万トン装置は平均50%の間歇運転を余儀なくされると予想されている。ROCの運休を含めると停止プラントの総設備能力は169万トンとなる。残るは61万5,000トンだけで、当面の減産率は実に73%に達する。
 
 一方、エチレン系誘導品の設備能力は10社合計で224万トンとなっている。ほとんどの設備が高率操業を維持しているので現時点におけるエチレンの需給はタイトに近い状態と見られている。したがって、大幅な給水制限が実施されるとただちに同地区ではエチレンが大幅に不足してエチレンの大量緊急輸入もしくは誘導品設備の大幅な稼動調整が必要となる。当然プロピレンならびにその誘導品についても同様のことがいえる。
 
 給水制限措置が実際にどのていどの規模になるのか、またどのていどの適用期間になるのかは不明だが、東南アジアのエチレンの需給バランスは6月に入ってタイト化が進んでいるので同地区の誘導品プラントが安定操業を維持していくのは極めて困難との見方が関係筋に共通した見方となっている。
 このままいくと、タイ国内の各種誘導品の需給が急逼迫するだけにとどまらず、年60万トンに達しているポリエチレンをはじめとした誘導品の輸出とオレフィンの輸出がともにしばらく中断することにもなるだけに、アジア地域全体の需給バランスと市況に大きな影響が出てくるのも必至と見られる。