2005年11月07日
アンモニアの需給が各地で急逼迫
天然ガスの高騰が引き金、市況も急騰
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品(海外、市況)
【関連企業・団体】:なし

 旭ケミカルズなどアンモニアメーカー筋によると、ここにきてアンモニアの需給バランスが世界各地で急逼迫してきた。
 最大の消費国である米国の需要家の多くが、原油に続く天然ガスの価格急騰に伴う国産アンモニアの価格上昇に対応してCISや南米、さらには中東からの輸入の拡大に一段と力を入れ始めたことと、天然ガスの高騰で採算を維持できなくなったアラスカやカナダのアンモニアメーカーが相次いで操業を休止するなりあるいは休止を表明するなりし始めたことが直接の引き金。これに伴い、米国にとどまらず需給タイト化の波が一気に世界全体に広がり、これによって国際市況も急騰、この影響でわが国の需給と市況も急激に変化し始めている。
 しかも米国では、MTBE規制の広がりが必至の見通しにあって増大するエタノール需要を満たすためのとうもろこしの増産機運が急速に高まっており、それに伴い肥料用のアンモニアの需要が一段と拡大する公算が濃厚ともなってきている。このため、このままいくと世界全体でアンモニアの品不足が一層深刻になるとの見方が関係筋の間に広がっている。
 
 旭化成ケミカルズの調べによると、04年における全世界のアンモニアの生産量はおよそ1億4,200万トンであった。最大の生産国は中国で、04年の実績は4,220万トン。以下はCISの1,900万トン、インドの1,300万トン、米国の1,080万トン--などが続いている。
 ただし、かねてから世界全体の需給と市況は米国の動向によって大きく左右されてきている。これは、各国が輸出するアンモニア全体の40%前後を米国が輸入するパターンが続いていることによるもの。04年の米国の総輸入量は710万トンで、各国の総輸出量の39.7%を占めた。同国の総需要量の約40%を占めた計算になる。
 その米国の最近の市場に大きな衝撃を与えているのが大型ハリケーンの襲来と原料天然ガスの高騰。このため多くのユーザーが相次いで海外品の調達量の拡大に乗り出しており、それに伴い国際需給が一気に逼迫し、国際市況が急騰してきている。直近のフロリダ着値はトン当たり400ドル弱となっている。最近のボトムの7月の平均価格に比べると130ドルもの上昇となる。
 もう一つの問題は、米国の需要家の輸入拡大策によってロシアや中東からのアンモニアの多くがこれまで以上に米国に向けれるようになってきたため韓国など極東諸国の需要家が突然の入手難に陥りつつある点だ。冷凍船の船腹がもともと大幅に不足していることが手当て難に拍車をかけるかたちとなっている。特に韓国の需要家は、アラスカからの輸入が全面的にストップとなる見通しとなってきたので事態は一層深刻といえそう。
 
 今後の需給と市況は米国におけるMTBE規制の行方に大きく左右される見通しだが、新増設の計画規模が世界全体でとらえても小さいだけに需給が緩和に向かう可能性は極めて低いと見られる。