2006年02月10日
SMのアジアの需給、今年はさらに逼迫の公算
上期の定修集中時期は品不足が深刻に
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品(海外)
【関連企業・団体】:三井物産

 大手商社やSM(スチレンモノマー)メーカー筋の調べによると、北東アジア地域における今年のSMの需給バランスはこれまで以上に逼迫する公算が濃厚となってきている。中でも2月から5月までの4ヶ月の間は、同地域のSMメーカーの多くが定修を実施するため中国・SHELL/CNOOCの大型SM装置が3〜4月から稼動を開始してもなお供給力がかなり不足するのが避けられない見通しにある。これに伴い、同地域における当面のSM市況は一段と強含みで推移することになるとの見方が広がっている。
 
 SMの北東アジア地域における需要は06年も引き続き着実な伸びを遂げるというのがSMメーカーと大手商社全てに共通した見方となっている。SMの国際ディストリビューター大手の一つの三井物産も同様で、同社では、今年の同地域の総需要量を前年比2.3%増の1,056万4,000トンと予想している。うち最大消費国の中国の需要は同6.0%増の445万3,000トンに達すると見ている。
 一方の供給量については、同地域全体で同5.4%増えて907万8,000トンになると推定している。伸び率は需要量のそれをかなり上回るとの判断である。しかしそれでもなお総需要量に対しては148万6,000トンの不足となり、したがって同地域の需給の均衡には域外からの少なくとも150万トン前後の輸入が不可欠と判断している。
 
 ポイントはその域外からの流入がどのていど可能かだが、この点について同社では今年は前々年や前年を大幅に下回るのが避けられないと判断している。域外、すなわち米国、サウジアラビア、シンガポール、インドネシアといった国々からの05年のSMの流入量はほぼ150万トンであったと見られている。内訳は米国品とサウジ品がともに48万トン、シンガポール品が40万トン、インドネシア品が11万トンと想定されている。それでも05年の北東アジアの需給は16万トン強の不足バランスになったと見られている。
 
 三井物産では、そうした域外からの流入量が今年は49万トン減って108万トンに縮小すると予想している。これは、米国からの流入が前年の6割強の30万トンに縮小するとともに、シンガポールからの持ち込みが前年の半分の20万トンに落ち込み、またインドネシア品が一気にゼロになると予想していることによる。米国品の大幅減については、他の商社やSMメーカーも同様の見方を取っている。米国における天然ガスやその他の固定費ならびに変動費の高騰振りから推して遠隔の北東アジアに大量に製品を振り向けるとは考えられないとの判断である。一方シンガポールやインドネシア品の激減は、いずれもそれぞれの国が国内で拡大する需要に優先的に対応していくことになるためという。
 こうした予想通りにいくと、今年の北東アジア地域では年間不足量が昨年の2.6倍の42万6,000トンに達することになる。しかも、2〜5月には合計18基ものSMプラントが一斉に定修で運休することが確定している。このため同地域の市況が強含みで推移するのは確実と見られる。ただし、総需要の圧倒的多数を占める中国のユーザーは価格が急騰すれば必ず長期の大幅減産に踏み切るだけにSMメーカーとしては対応が難しいところといえそう。