2006年04月17日
ANの今年の世界の需要、再び前年超えに
旭化成ケミが予想、需給バランスも好転
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品(海外)
【関連企業・団体】:旭化成ケミカルズ

 旭化成ケミカルズはこのほど、AN(アクリロニトリル)の今年の世界全体の需要が小幅ながらも2年ぶりに前年を上回る見通しにあるとの調査結果をまとめた。一方の供給能力は、米・スターリングの撤退とメキシコ・ペメックスのプラント操業停止によって前年を下回るのが確実と見られている。3月から5月にかけてはANプラントの定修が集中するので特に4〜5月はアジア地域を中心に需給が逼迫するとも予想している。
 
 同社の調べによると、ANの昨年の世界における需要量は前年比約2%減の505万5,000トンとなり、4年振りのマイナス成長に転じた。この要因はアクリル繊維の需要が原料ANの高騰によって年後半に入って縮小したことにあると分析している。ANの需要量のうち半分強はアクリル繊維向けで占められているが、昨年はそのアクリル繊維向けの消費が前年を7%下回って240万1,000トンにとどまったため前年を下回る結果になったとしている。ABS樹脂向けは2%増、その他は4%増えたと想定している。
 
 一方、今年の総需要量については、前年を2%弱上回って514万5,000トンになると予想している。過去最高となった04年の実績に近いととろまで回復すると見ている。これは、昨年2%にとどまったアジア地域の需要の伸びが今年は5%に大きく膨らむとの判断によるもの。最大消費国の中国の需要が、昨年終盤に完成した多くのアクリル繊維設備の相次ぐ本稼動入りもあって昨年を14%上回る見通しとなってきたのが大きい。繊維向けとABS樹脂向けがともに14%増、その他向けが11%増になるというのが同社の予想である。
 
 また、世界の今年の実生産能力は約550万トンとなって、昨年より54万トン縮小する見通しにある。スターリングの36万トン設備とペメックスの18万トン設備が操業停止となったことによるもの。ネームプレートベースでは580万トンだが、定修による運休設備が昨年同様に30万トン規模に達するため実際の生産能力は550万トンになる見込みだ。

 需要が旭化成ケミカルズの予想通りに514万5,000トンとなった場合の年平均稼働率はおよそ94%ということになる。昨年の平均を5ポイント強上回ることになる。世界平均94%という稼働率はかなりの高率といえる。しかも3〜5月の3ヵ月の需給バランスは、旭化成ケミカルズ、ダイヤニトリックス、韓国・泰光、BASF各社の定修の影響で極度に逼迫する見込みにある。こうしたことを背景に国際市況がどのように変化していくかが注目される。