2006年05月22日
アンモニアの需給バランスが急逼迫
定修と操業トラブルで在庫も一気に縮小
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:なし

 アンモニアの国内の需給バランスが急逼迫してきた。アンモニアメーカーの定修の集中と相次ぐ操業トラブルの発生が重なったのが最大の要因で、このためアンモニアメーカーの間には5月末のメーカー在庫が3月末の8万3,647トンから一気に6万1,000トン前後まで縮小する公算が濃厚とのとの見方が広がっている。
 アジア地域全体の需給も、アラスカの生産停止が大きく響いてタイトバランスとなっており、同地域の直近のCFR価格の平均はトン当たり365ドルに跳ね上がっている。半年前に比べると100ドル高い。このため日本国内のアンモニアメーカーや需要家は不足分を輸入品でカバーするわけにもいかず、これが在庫の急速な縮小をもたらす要因の一つともなっている。需要は引き続き安定した伸びを続ける見通しにあり、このためアンモニアの逼迫状態は長期化するというのが多数の関係者に共通した見方となりつつある。
 
 アンモニアの3月の生産と出荷数量は生産が9万4,462トン、輸入が1万7,823トン、内需が12万3,596トン、在庫が8万3,647トンとなっている。過去1年で生産・消費が最も活発であった今年1月に比べると、生産は29.3%減、輸入は45.7%減、内需が14.5%減、在庫が5.1%減ということになる。うち在庫は過去1年で最高となった今年2月を11.4%下回っている。
 しかもアンモニアメーカー筋によると、4月に入ってからは生産がさらに減り、輸入も各社の懸命な努力にもかかわらず思うように伸びないできたという。このためある中堅メーカーでは4月末のメーカー在庫は一気に6万トン台まで縮小したと推測している。そして5月も生産が引き続き9万トン台にとどまる見通しとなってきたことから、需給はタイトバランスが続き、メーカー在庫も6万1,000トン台と93年いらいの低水準に張り付いたままになると予想している。
 
 これは、需要量がANやカプロラクタムさらには硝酸向けなど全ての分野で着実な伸びを続けているなかで生産量が定修の集中と操業トラブルの発生等で必要量を1〜3月期以上に下回る事態となっているためで、アンモニアメーカー多くは少なくとも今年8月末まではタイトバランスが続くと予想している。
 ある中堅メーカーでは、需要は3月の12万3,596トンが8月には約14万1,000トンに拡大、一方の生産は12万2,000トンがやっとなので2万トンていどの輸入がどうしても必要と判断している。その場合も在庫は今年1〜3月を大きく割り込んで6万8,000トンていどになるとの予想である。生産量が需要量を下回るのは、アンモニア設備自体の定修に加え、メラミンプラントの定修や専用バースの定修もあって7月末までに合計6社のアンモニアメーカーのうちの5社が減産を余儀なくされる見通しにあり、しかも、これらのメーカーの中には操業トラブルや予想を大きく上回る規模の原料の高騰によっても減産に踏み切らざるを得ないところが複数出てくると見られるからだと分析している。
 また、07年度から08年度にかけてはさらに逼迫感が深まるというのが関係筋の多くの予想となっている。これは、メラミンプラントの停止に伴って副生アンモニアの生産量が年3万5,000分減る一方でメタキシレンジアミンやアニリン等の新規大型需要が相次いで発生し、しかも輸入の拡大が世界全体の逼迫の進行によってほとんど期待できなくなるとの見方が一般的になっているためだ。ついては、原料価格がどうなるかも警戒される。