2006年05月29日 |
日化協技術賞に「リチウム電池用電解液」開発の宇部興産 |
【カテゴリー】:行政/団体(新製品/新技術) 【関連企業・団体】:宇部興産、トヨタ自動車、日立化成工業、日本化学工業協会 |
日本化学工業協会は29日、第38回日化協技術賞を「3倍容量のリチウムイオン二次電池用電解液の開発と工業化」に成功した宇部興産に贈ると発表した。技術特別賞は、新異方導電フィルム開発の日立化成工業、環境技術賞は、自動車用水性塗装技術を共同開発したダイハツ工業、トヨタ自動車、関西ペイントの3社に決まった。 同協会では毎年わが国で生れた、画期的で優れた化学技術を表彰している。今年は12件の応募があり、技術委員会(委員長:松井悦郎・トクヤマ常務)で審査した結果、以下の通り決定した。表彰式は30日の日化協総会の席で行われる。 【日化協技術賞(総合賞)】 ◇宇部興産 「リチウムイオン二次電池用機能性電解液の開発とその工業化」 従来のリチウムイオン二次電池用電解液を改良し、初期の3倍近い容量を有する電池の開発に大きく寄与する業績をあげた。 (1) 高純度電解液の開発と工業化プロセスの確立 (2) 高純度添加剤による電極界面の電気化学的制御技術 で構成され、「機能性電解液」として実用化し、電池の性能向上に大きく寄与した。電池の負極および正極界面を電気化学的に制御することにより、安全性や性能に優れた電池の開発,普及が可能になるとともに、その後の電池開発に大きな影響を与えることとなった。 とくに小型、高容量が必要な携帯電話、デジカメ搭載用の角型電池の開発、普及には大きく貢献し、世界市場シェアの53%、日本のハイエンド電池市場シェアの68%を得るに至っている。 【日化協技術賞(技術特別賞)】 ◇日立化成工業 「低温短時間接続用異方導電フィルム」 液晶ディスプレイ(LCD)と駆動用ICとの接続を低温、短時間で実現し、LCDの大型化、狭額縁化に大きく寄与した異方導電フィルムを開発した。 従来の異方導電フィルムは導電粒子を分散したエポキシ樹脂系接着フィルムであり、180〜210℃,10秒の接着硬化条件が必要だったが、熱によるLCDへのダメージや基板のそり発生等の問題があって、LCDの高精細化、大型化、狭額縁化にネックとなっていた。 本技術はアクリレート−ポリヒドロキシエーテル系のラジカル重合硬化に着目した低温接着フィルム技術であり、140℃、10秒の硬化条件でも従来と同等の異方導電性,接着性を示し、また接着温度の低温化によりLCDや基板への影響が低減され、大型LCDの実用化に大きく貢献した。現在の大型LCD市場における本製品の世界市場シェアは約70%を占めるに至っている。 【日化協技術賞(環境技術賞)】 ◇ダイハツ工業・トヨタ自動車・関西ペイント「環境対応水性塗装技術の開発」 自動車生産工程において環境負荷物質であるVOC(揮発性有機化合物)およびCO2を削減できる新しい水性塗装技術に関する業績。従来の自動車塗装(溶剤系塗料)の環境負荷低減対策として中塗り焼付け工程数を少なくした方法が提案されたがCO2削減しか効果がなく、また一方、VOC削減対策として水性塗装が提案されたが、従来法は焼付け工程数が省かれていないためCO2削減には効果がなかった。 本技術は、焼付け工程数を少なくした水性塗装技術であり、VOCおよびCO2両方の削減に寄与する技術である。技術開発は、最適の水性塗料および塗装技術をダイハツ工業、トヨタ自動車および関西ペイントの協同で実施し、世界初の「水性1コートソリッド塗装」および日本初の「水性3ウェットメタリック塗装」の2種類の技術を確立した。 これ等の技術はダイハツ車体大分工場で実用化されており、従来の溶剤系塗装工程に比較してVOCが約70%、CO2が約15%削減できている。 ニュースリリース参照 http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1148866695.doc |