2006年06月09日
「ものづくり白書」IT活用成功例でダイセル網干工場
【カテゴリー】:行政/団体(経営)
【関連企業・団体】:経済産業省

 経産省は9日、政府が閣議決定した「05年度 ものづくり基盤技術の振興施策」(ものづくり白書)を発表した。
 
 「企業収益は過去最高を更新、設備投資も増加を続けている。中小企業も総じて回復傾向にある」と製造業の現状を分析。「わが国製造業はGDPの21%、研究開発の91%、輸出の94%を占め、わが国経済において重要な地位を占めている」と位置づけている。
 
 白書は第1部「わが国のものづくり基盤技術の現状と課題」と第2部「05年度に講じた施策」の2部構成。第1部ではさらに(1)製造業のイノベーション創出拠点としてのわが国の課題と展望(2)人口減少社会におけるものづくり人材の育成(3)ものづくりの基盤を支える研究開発・学習の振興の3章に分けて分析・報告している。
 
 この中で、製造業のイノベーション創出拠点について「グローバル化が進む中、アジアを中心に国際的に機能分業を進めている。組立量産段階に近づくほど、海外、特にアジアとの分業が進む一方で、研究開発の中核拠点はあくまで日本であり、中国などに展開する場合であっても基礎研究を担わせているケースはごく少数にとどまる」と紹介している。
 
 また、21世紀型ものづくりに「ITの活用」は不可欠であるとし、実際に「ITを活用した生産革新の事例」として、ダイセル化学工業・網干工場(兵庫県姫路市)の例をあげて次のように紹介した。

 「酢酸セルロースから写真用フィルムの原料などを製造する同工場では、従来、プラントの情報化は分散して行われていたが、オペレーターの習熟にも時間を要し、操業も安定しにくかった」「ITの活用によってプラントの操業安定化、事故の未然回避、オペレーターの習熟期間短縮などを実現し工場一人当たりの付加価値額が3倍となるなどの成果をあげた」
 
 このほか白書は「人口減少社会」がもたらす課題に触れ「団塊世代の退職に伴う技術継承等の2007年問題について危機感を持つ企業が増加している」と指摘、「単に雇用の延長を図るのではなく、技能の教え手として活用を図ることが重要」と提唱した。