2001年08月03日 |
環境省、“水中のノニルフェノールは生態系に影響”と判断 |
魚類への影響評価試験の結果を審議会に報告 |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:NEC、環境省 |
環境省は3日、「内分泌撹乱化学物質問題検討会」の平成13年度第1回会合を開き、ノニルフェノールとトリブチルスズ(TBT)の2物質を対象に12年度に実施した魚類への影響評価試験の結果を報告した。 この中で同省は、TBTについて、「TBT化合物が魚類に対して内分泌撹乱作用を有するという明らかな結果は得られなかった」と報告したものの、一方のノニルフェノールに関しては「低濃度で精巣卵が認められるという内分泌撹乱作用を十分に疑わせる形態的異常がみられた」と指摘、加えて「こうした点から、わが国の環境水中でみられるノニルフェノールは、魚類への内分泌撹乱作用を通じ、生態系に影響を及ぼしている可能性があると評価される」との見解を示した。 今回の試験は、同省が(財)化学物質評価研究機構を起用してメダカを使って実施したもの。その結果、パ-シャルライフ試験では、「雄の場合、水中濃度23.5μg/Lで二次性徴の雌が認められ、また、11.6μg/Lでは精巣の一部の卵細胞化とビテロジェニン産生が有意に認められた」という。またフルライフサイクル試験では、「雄について、水中濃度17.7μg/Lで性分化異常、受精率低下等が見られた」とも報告している。さらに、「試験管内試験によって魚類の場合はエストロジェンレセプターとの結合性やエストロジェン様活性が強いことも世界で初めて証明された」とも指摘したうえで、「こうしたことから、ノニルフェノールは、魚類に強い内分泌撹乱作用を有することが強く推察された」と結論している。 ただし、人の健康に及ぼす影響の有無については「ヒト細胞を用いたインビトロ試験ではエストロジェンレセプターとの結合性が極めて弱く、また、これまでの文献調査におけるげっ歯類を用いた動物実験でも極低濃度での反応が報告されていないので、魚類での試験結果がそのまま人にはあてはまらないと考えられる」と述べている。 しかしながら、リスク低減のための取り組みは必要と主張、ついては重要な課題として3点を挙げている。すなわち、(1)水環境中濃度を極力、予測無影響濃度(PNEC)以下にするための方策を早急に関係者の間で検討する必要があり、業界による代替品の利用の促進等の自主的取り組みも期待される。また、PRTR制度の活用によって自主管理がより促進されることも望まれる(2)代替品の開発・使用に際しては、分解性が高く有害性が低い、より生態系に配慮した代替品の対品の使用を進めるとともに、よりよい代替品の開発に向けて産官学が協力して取り組みを加速する必要がある(3)行政においては、人だけでなく、生態系保全の観点からの化学物質審査・規制のあり方の検討や、水質保全の観点からの検討等を進めていく必要がある--の3点である。 |