2006年11月15日
旭化成の中国の分離膜製造工場が稼動開始
中国初の長寿命精密ろ過膜モジュールを量産
【カテゴリー】:経営(海外)
【関連企業・団体】:旭化成

 旭化成が高分子中空糸膜「マイクローザ」事業を中国でも展開していくため全額出資して中国に設立した現地法人「旭化成分離膜装置有限公司」は、このほど浙江省杭州市の経済技術開発区内に年産3万本能力のモジュール組み立て工場を完成し操業を開始した。
 
 同工場は、旭化成(旭化成ケミカルズ)がかねてから世界の3分の1のシェアを維持している水処理・分離精製用高分子中空糸ろ過膜「マイクローザ」のうちの浄水用精密ろ過膜「マイクローザMF」によるモジュールを量産するためのもの。
 「マイクローザMF」は、孔径が数ミクロンから0.1ミクロンのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)製品で、物理的強度や対薬品性に優れるだけでなく濁度が0.1以下で常に安定しているためクリプトスポリジウム等の病原菌も完全に除去できる点が大きな強み。このため凝集沈殿砂炉下法に替わるろ過プロセスとして、世界最大規模である一日当たり8万立法メートルの巨大浄水場3箇所をはじめ合計500箇所以上の世界各地の浄水場で採用されている。浄水用では世界最大のシェアを保有している。
 
 これまでの生産拠点は同社富士工場だけであった。同工場所生産能力は年3万本である。したがって今回の中国の工場は2番目の生産拠点となる。
 同社があらたに中国に進出することにしたのは、中国では水不足が深刻化していて全ての水の適正処理と回収が国家的命題の一つとなっているおり、しかも現在の工場排水量が日量5,000万トンもの規模に達していてさらに今後も工業全体の発展・拡大に伴って排水量が少なくとも8%ていど増えていく見通しにあるため。現在の中国国内には複数のろ過膜製造工場が存在しているが、今回の「マイクローザMF」のような長寿命の精密ろ過膜の生産は不可能といわれる。このため同工場はスタート当初から高稼働を維持していくことになると見られている。