2006年12月04日
東ソー、年商1兆円のハイブリッド企業を目指す
田代会長と土屋社長が会見で表明
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:東ソー

 東ソーの田代圓会長兼CEOと土屋隆社長は1日夕、定例記者会見を開いて東ソーグループ全体ならびに東ソー本体の経営概況と今後の経営施策の基本について明らかにした。
 
 この中で田代会長は、はじめに平成19年3月期の連結ベースの業績について「機能商品部門が予想を上回る成長を遂げ、またかねて拡充に力を入れてきたビニル・イソシアネートチェーン部門も順調に業績を拡大しているので通期の売上高は当初の予想を100億円上回って前年度比20%増の7,800億円となる見通し」と原燃料高や中国の自給率の拡大といった厳しい経済環境が続く中でも好調な業績を上げられる見通しにある点を紹介。次いで今後の展開については「年間売上高1兆円を目標に掲げ、コモディティ事業とスペシャリティ事業の両輪がほどよくバランスしたハイブリッドカンパニーとしての成長を目指してしていきたい」と、引き続きビニル・イソシアネートチェーン部門と機能商品部門のもう一段の拡充によって高成長を維持していく考えを披露した。
 
 一方土屋社長は、「当社グループではかねてから目指すべき企業イメージとして(1)豊かな収益力を持つ企業群(2)環境に適応して進化する企業群(3)全社員が能力を出し切る企業群の3点を掲げて体質強化を図ってきたが、現在は着実に目標をクリアできつつある。機能商品事業の大幅な拡充もその成果の一つといえる」と東ソーグループ全体の体質改善が順調に進んでいる点を強調。そして「今後も世の中のニーズによりスピーディーに対応、年商1兆円を次のステップに化学企業のトップ10入りを目指したい」と、さらなる成長に対する強い意欲を表明した。
 
 両首脳の発言概要は以下の通り。
 田代会長の発言。
 ○当社の場合も、原油価格やナフサ価格が引き続き高水準にとどまっていること、さらには中国の化学製品全体の需給が緩和してコスト競争が一段と激化していること等から引き続き厳しい経営環境にさらされている。なかでも中国のカーバイド法塩ビの大幅増産は当社に取って新たな問題として浮上してきている。こうした中でも、06年度の連結売上高は当初の予想を100億円上回って7,800億円となる見通しにある。この5年の平均成長率は13%ということになる。経常利益は500億円となる見込みだ。5年前の111億円を大きく上回る規模となる。対売上高経常利益率は6.4%となる見通しで、これも5年前の2.6%を大幅に上回る。ただしピークの04年度の9.5%には遠く及ばず、このためこの早急な改善が来年度以降の重要な課題となる。

 ○部門別の業績では機能商品部門の成長が特筆できる。機能商品部門は、免疫診断装置や診断薬等によるバイオサイエンス事業、エチレンアミン等の有機化成品事業、ジルコニア等の機能材料事業、石英ガラス等による電子材料事業、水処理事業等の環境関連事業、日本ポリウレタンによるMDIなどの高機能ウレタン事業--の6分野の事業で構成されているが、いずれもここにきて急成長を遂げている。01年度の売上高は1,337億円で、営業利益は93億円であった。06年度の売上高は2,950億円、営業利益は341億円となる見通しだ。当社グループ全体の全体の売上高のうち38%を、また全体の営業利益の64%を機能商品部門が占めることになる。文字通り最大の基盤事業部門に成長している。しかし、中には成熟商品となりつつあるものもいくつか出てきている。将来を支える新たな商品の開発・上市が急がれる。選択と集中の徹底で効率よく狙いを実現していきたい。チャンスがあればM&Aにも挑戦したい。

 ○一方のコア部門であるビニル・イソシアネート事業については、国の内外で積極的に設備投資を実施しているところ。昨年秋のVCMの年産40万トンプラントの増設に続いて今月末には中国・広州に同22万トンの能力のPVC工場を立ち上げるので、07年初頭におけるビニル・チェーンの設備能力は苛性ソーダが120万トン、VCMが145万トン、PVCが110万トンとアジア最大規模になる。さらに南陽では07年秋に子会社の日本ポリウレタンがMDIの設備を倍増して40万トン体制とするのに合わせて原料アニリンの設備を同時期に15万トン増強してアジア最大の30万トンに拡大する。また、08年4月には22万キロワットの自家発電装置を、さらに同年第3・四半期には苛性ソーダの15万トン設備をそれぞれ増設する。総投資額は約1,000億円となる見込だ。

 ○経営環境は、08年に中東各国や中国で大型化学プラントが相次いで稼動を開始することもあって一段と厳しくなる見通しにある。そうした中を勝ち抜いていける体質を構築するには思い切った投資も必要と考えている。
 目指す姿は、「コモディティー事業とスペシヤリティ事業の両輪の良好なバランスのもとで成長を遂げるハイブリッドカンパニー」であり、ついては年商1兆円を目標に掲げていきたい。
 
 土屋社長の発言。
 ○東ソーグループはかねてから3項目で構成される企業イメージ、「環境適応し常に進化する企業群」「豊かな収益力を持つ企業群」「全社員が能力を出し切っている企業群」の3項目の目標の実現に全社員で挑戦してきた。現在の進捗状況は、今期の対売上高比経常利益率がかつての目標であった5%を上回って6.4%となる見通しにある点や、今年度に新たに戦列に加わった製品の構成比が前年度を大きく上回る見込みにある点等から判断しておおむね順調に進展していると言える。最近の機能商品部門の業績の急拡大もその成果の一つということができよう。

 ○機能商品部門の業績の拡大は、バイオサイエンス製品、環境関連材料、情報電子材料の三つの分野に特に重点を置いて研究開発を進めてきたのが実を結んできたもの。これからも技術に一層磨きをかけて世界トップレベルを維持していくなかで、これら3分野のニーズに的確かつスピーディに対応していくようにしたい。

 ○一方石油化学部門については、原料の多様化率の向上やEVA等の機能製品の拡充によって体質の強化を図っていきたい。

 ○今年度の連結売上高は、史上最高となった前年度をさらに上回って7,800億円となると判断している。しかしこれに満足することなく次のステップでは1兆円を目指し、日本の化学企業のトップ10入りをできるだけ早く実現するようにしたい。