2006年12月14日
BPAのアジア市場は07年も供給力不足の見込み
消費はEX向けがPC向けを上回る公算が濃厚
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:三井化学

 ビスフェノール-A(BPA)のトップメーカーである三井化学はこのほど、アジア地域におけるBPAの07年における需給の展望をまとめた。

 それによると、日本を含むアジア地域全体における07年の総需要量は06年の実績見込みを10%上回って208万8,000トンに拡大、対する同地域の自給能力量も13%増えるもののそれでも総供給力は204万6,000トンにとどまり、したがって07年もアジア地域ではBPAの品不足状態が続くのが避けられないとの結論になっている。
 
 需要家の間には欧米からの手当てに活路を見出したい向きもあるようだが、欧米でも当面の新増設規模が極めて小さいためアジアに振り向けられるのはごく限られた数量にとどまるというのが大手商社を含めた関係者の多くに共通した見方となっている。

 三井化学の想定によると、BPAの06年の需給バランスは、総需要量が前年比9%増の190万1,000トンとなったのに対し、地域内の総供給能力が181万6,000トンにとどまったため不足量を欧米からの流入品によってかろうじてカバーしたのが実情という。

 そして続く07年は、地域内の供給能力が南亜の年13万トンとバイエルの同10万トンの増設によって計20万トン増えるものの、需要がポリカーボネート(PC)メーカーの相次ぐ新増設で同187,000トン拡大する見通しにあるため引き続きBPAの需給はタイトのまま推移するというのが同社の展望だ。
 
 同社では、こうした需給バランスの中ではアジアの市場構造面にこれまでにない大きな変化が生じる公算が濃厚と予想している。

 例えば、BPAの主要な需要家であるPCメーカーとEX(エポキシ)メーカーとの間で原料BPAの安定確保を目指しての凌ぎあいが一段と激化、それに伴い、かねてから全体の需給バランス見合いで原料価格の変動を比較的スムースに受け入れるパターンを踏襲してきたEXメーカーがPCメーカー以上に有利なポジションを確保するようになることなどは十分に想定される事態と判断している。

 従来はBPAの総消費量の7割方がPC向けで、EX向けは3割そこそこであった。しかし、最近は原料ベンゼンやプロピレンの高騰に伴うBPAの価格修正に対してEXメーカーの多くが比較的円滑に対応するようになってきたことから両者の構成比は急速に接近している模様。

 こうした中で、アジア各国のBPAメーカーは07年も年明け早々から再値上げを実施する構えにある。直近のオファー価格はCFRトン当たり1,800ドルで、需要家各社が同意すればPC向けとEX向けがともに同じレベルに並ぶことになる。

 ただし、上げ幅はEX向けが同約100ドルとなりPC向けを同50ドル前後上回ることになる。そうなれば台湾や韓国のBPAメーカーがEX向けの配分を優先させていくのは確実で、その結果双方の構成比が完全に逆転する事態となる可能性も十分あると同社では予想している。
 
 実際の需給バランスと市場構造がどうなっていくかは07年2〜3月にはほぼはっきりしてくると見られるが、誘導品メーカー特にPCメーカーには厳しい事態を想定しての早めの対策の確立が必要となりそうだ。