2007年02月19日 |
ジェトロ、中国ビジネスセミナー「物流のリスクとその対処法」 |
流れはSCM、CFM 汚職、腐敗は絶対に避けよ |
【カテゴリー】:海外(行政/団体) 【関連企業・団体】:経済産業省 |
ジェトロ埼玉、埼玉国際ビジネスサポートセンターは16日、さいたま市の産学交流プラザ彩の国で中国ビジネスセミナー「物流のリスクとその対処法」と題するセミナーを開いた。 講師の白土茂雄・アジア・ロジスティクス研究所代表(千葉県柏市)は現地での豊富な経験を基に、行政、物流市場、同管理、事故・事件についてその仕組みや具体的な例を挙げ対処法について、細かく講演した。 とくに関係官庁との連絡を密にしてリスク時に救済策を要請し、うら取引の汚職、腐敗を絶対に避け「あせらず」、「あわてず」、「あきらめず」の“3あ主義”による粘り強い交渉が必要であることを強調した。中国側も外資企業に模範を求めているという。要旨以下の通り。 中国の関心が高い物流のテーマは、まず、限られた資本から最大の利益を創出するSCM(サプライチエンマネジメント)、CFM(キャッシュフローマネジメント)と、子孫によりよい地球環境を残す環境保全である。 高効率物流として低コストで確実に着く、安全に運ぶ、定時に送ることが前提。インターネットが支える移動中の荷物の所在位置、複数個所の在庫詳細、継続性、需給動向などの可視的物流がある。 ロジスティクスの概念としては、物流以前からビジネスロジスティクス、サプライチェーンロジスティクス、グリーンロジスティクスと進んでいる。背景には少量多品種、技術の進歩と商品ライスサイクルの短縮、必要なものを必要なときに必要なだけを確実に実行、高品質、環境保護への貢献などがある。 このような物流ニーズを阻害する要因として、行政的にはまず、物流の停滞や遮断を発生させるシステムや、書類の不備、遅延がある。関係法規の把握、習熟や変化へのすばやい対応、関係官庁への救済策の要請が必要だ。輸出入には許認可事項が多く、所官庁との付き合い方が重要。 物流市場では、日中航路海上運賃の問題がある。財務内容に不安のない船会社を運賃が多少割高になるのを覚悟して選ぶか、場当り主義に徹するかである。 また、契約履行能力が欠如しているので契約相手の経営姿勢の見極め、法的対抗力を持ちうる契約書の作成、組織内で決定力を持つ人物との交渉、取り決め、組織外から圧力を及ぼせる人物との関係構築が必要だ。 輸出品の増値税還付にも関係官庁との交渉力が求められることがある。不当な費用負担、物流の混乱、遂行不能などの詐欺的行為からの防衛には、法的対抗力を持ちうる契約書の作成、国際慣行の習熟、関係監督官庁との連携、訴訟や仲裁を恐れない対応が求められる。 物流管理は「所詮、物流は自然や権力相手の水もの」との認識で、スケジュールに一定のゆとりを持ち、在庫にも多少の余裕が必要。緊急時のバックアップ体制を維持し、下請けにも無理を強要しない。社内と社会的な重要度を取り違えない。中央と省、開発局の政策が一致しないときもあり、心得て対応すべきである。 物流管理には弱小が強大を使うチームワーク、零細業者を巧みに使うチームワークを考え、零細業者に対しては相手を育てる心、功労者をたたえる気持ちが大切である。物流管理能力はまだ低く、相手の立場を尊重し、妥当な範囲でメリットを与え、精神的なつながりを深め、リーダーシップを高めてゆく心がけが重要。 物流研究と教育、人材育成は盛んだ。高等物流教育機関が増え、物流管理や物流エンジニアリングの専攻科目がある。06年の学部、学科の数は261にのぼっている。ただ教員、教材とも不足しているといわれる。物流の作業員、運転手教育は置き去りの状態。 物流マネージメントについてみると、情報の共有が不得手、未成熟。多くの企業、機関の共同作業となる複合輸送では大きなハンデキャップとなる。また、チーム内で相互に知らせあうべき事項の常識的な共有も未成熟。知らせるべき相手への情報伝達には無関心だ。 事件や事故はつきものであり、リスク分析の上、事故防止マニュアルを作成し物品管理手順を徹底、保険でカバー可能なものは付保する。 <Q&A> (1)SCMの実現にはまだ時間がかかる。SCMはフェアな取引関係にあるところが、対等な立場で情報の共有を行って、初めて実現できる。相手の手の内を探りながら取引しているようでは、それぞれが部分最適をはかるので、全体最適には向かないと思う。 (2)省をまたぐ物流については、90年代の初めに規則が改正されて、正規の営業免許を持つ車で、免許に記された営業所が、出発地か到着地であれば全国どこでも輸送できる。ただ、例えば広州のトラックが上海—北京を運行できるかというと、かなり限定される。 この場合、実質的に可能なのは集団公司をトップにし、全国の主要拠点に分公司を持つグループに限られる。これは交通行政上の問題のみならず、地域主義や営業税の帰属をどこにするかの問題もからみ、すっきりした体制ができていないためである。 |