2007年03月05日
ANのアジアの需給、今年もタイトが必至の見込み
供給能力は前年のほぼ横並びで需要を下回る
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品(海外)
【関連企業・団体】:なし

 AN(アクリロニトリル)大手がこのほど調べたところによると、ANの今年の世界全体の年間生産能力は昨年比34,000トン増の572万3,000トンにとどまる見込みとなった。韓国の東西石化が30,000トン、オランダのDSMが4,000トンの増産体制を整備するだけで、増加率はわずか0.6%増ということになる。
 
 実際の生産量は、プラントの定修やメカニカルトラブル等で運休を余儀なくされたとき520〜530万トンになるとの見方が大勢を占めている。その場合は特にアジア地域の品不足が一段と深刻となる見通しで、このため今年も米国からの大量の持ち込みが必要不可欠となりそうだ。
 
 AN大手の調べによると、ANの昨年の世界全体の需要量は前年比1.5%増の518万トンで、うちアジア地域の需要量は同5.0%増の298万トンとなった。アジアの伸びが世界全体を大きく上回ったのは、中国の需要がAN繊維向けとABS樹脂向けを中心に前年をほぼ10%上回ったためとされる。

 対する設備能力は世界全体が569万トン、アジアでは279万トンであった。05年に対しては世界全体で約25万トン減少した。北米並びに中南米のANメーカーの中で原料高に音を上げて操業停止に踏み切るところがいくつか出たことによる。アジアの設備能力はほぼ前年並みであった。
 
 それでも、ネームプレートベースの世界全体の供給力は一応総需要量を上回ったことになる。ところが実際の生産量は、定修やメカニカルトラブルによる運休に原料プロピレンの高騰に対処しての生産調整が加わって515万トン程度にとどまったというのが大方の関係者に共通した見方となっている。
 
 つまり昨年は世界全体でもわずかながら供給量がショート、このため需要家の中には在庫を取り崩して操業を維持したところもいくつか出たと見られる。アジアの場合はもともと総供給力が総需要量を下回る事態が続いていたが、昨年はそのギャップがさらに拡大、このため米国からの持ち込みでかろうじてバランスを確保したようだ。

 今年の需給バランスはどうなるのか。AN大手では、総供給力が520万〜530万トンにとどまるのに対して需要が前年比1%増の525万トンになると予想している。アジアについては、ネームプレートベースの供給力が282万トン、一方の需要量が前年比3%増の310万トンと推定している。操業トラブルがゼロの場合でも世界全体ではかつかつの状態が続き、アジアでは30万トン弱がショートすると見ている。

 実際には定修とメカニカルトラブルで10万トン単位の不足事態が年に何度か発生することになりそうと判断している。中国の需要を10%増の130万トンと想定しているが、実際にこれを上回るようなことが起きると事態はさらに深刻となる。