2007年03月22日
寧波三菱化学、次期増設は80〜100万トン規模
竣工式で首脳陣が2010〜2011年の実現を表明
【カテゴリー】:経営(原料/樹脂/化成品)
【関連企業・団体】:三菱化学
会見する寧波三菱化学の船田董事長(右)と出資各社の首脳

 三菱化学が伊藤忠商事、三菱商事、中国・中信集団公司の各社との共同出資で中国に設立したPTAの製造販売企業「寧波三菱化学有限公司」は19日に中国・浙江省寧波市大しゃ開発区内で年産60万トン能力のPTA(高純度テレフタル酸)新プラントの竣工披露式(開場式典)を開催するとともにフル稼動入りしたが、当日現地で開かれた記者会見に臨んだ船田昌興・同社董事長(三菱化学副社長)は「次は年産80万〜100万トンの増設を計画しており、早ければ2010年遅くとも2011年中には第2号機を立ち上げたい」と語って大幅増強の早期実現に対する強い意欲を披露した。
 


 今回、同社が建設した工場は、中核企業の三菱化学に取っては日本(松山)、韓国(三南石油化学)、インドネシア(PT.MitsubishiChemicalIndonesia)、インド(MCC PTAIndiaCorp)
に続く5番目となるPTA生産拠点。福田信夫・同社薫事総経理によると、新たな触媒回収・リサイクルシステムを採用した第4世代の最新鋭プロセスによって高品質製品を効率よく生産でき、かつ環境負荷も極めて小さい点が同工場の大きな強みという。
 建設所要資金は3億5,900万ドル。06年12月に完工、今年1月末に性能保障運転を終了して2月中旬から本格運転に入り、そして3月19日の竣工式の開催日には100%稼動を実現した。工場の従業員数は225人。うち日本人が17人、インド人が2人となっている。
 
 中国ではポリエステル繊維向けを中心にPTAの需要が急拡大しており、06年の総消費量は前年比10%増の約1,400万トンとなった。国際品でカバーされたのはそのうちの約700万トン。残り700万トンは海外からの輸入で賄われた。
 三菱化学は長年にわたってアジア各地の生産拠点から中国にPTAを輸出、大手安定サプライヤーの一つとして中国のポリエステル繊維産業やPETボトルさらにはポリエステルフィルム等の多彩なPTA関連産業の発展に大きく寄与してきた。これには、中国におけるPTA取扱量がナンバー1の伊藤忠商事と同じく中国におけるPTA関連ビジネスの拡大に積極的に取り組んできた三菱商事の両社が十分に貢献してきたとされる。
 
 今回の大型新プラントの建設は、そうした日本側3社と中国の国有金融・投資企業「中信集団」とが今後も中国のPTAの需要の拡大が確実と判断したことによって実現したもの。これによって三菱化学は、中国の多くの需要家のニーズにより機敏かつきめ細かく対応、合わせて同国ならびにアジア地域全体におけるPTA事業の基盤の強化も加速していけることになる。
 
 大しゃ島北部の同社工場内で19日に開催された竣工式には浙江省や寧波市などの政・官・産の各界の首脳をはじめとした来賓およそ400人が参加、うち高官4人がステージ登って同工場の稼動開始を祝うとともに今後の拡大に対する期待の大きさを表すスピーチを次々と披露して開場から盛んな拍手を浴びた。
 
 竣工式に先駆けて現地のホテルで開催された日中合同記者会見における「寧波三菱化学」ならびに日本側出資各社の経営首脳の発言概要は以下の通り。
 
《船田昌興・寧波三菱化学薫事長(三菱化学副社長)》
「中国では、ポリエステル繊維向けを中心にこれからもPTAの需要は年率8~10%の比率で拡大していくと判断している。こうした中で最新鋭の技術による低コスト・低環境負荷型のPTAプラントを建設して稼動に入れたことは大変に大きな意味を持つ。これを機に、中国のポリエステル産業の発展にこれまで以上に大きく貢献していきたい。中国におけるPTAビジネスのモデルケースと称されるようにしていきたい。初年度は、邦貨に換算して約600億円を売上げ目標に掲げていく。利益も初年度からきちんと確保していきたい。3年後の対売上高経常利益率としては10%を目指していく。さいわいに大しゃ島は天然の良港に恵まれていて原料や製品を効率よく搬出入でき、また用地にも十分な余裕がある。こうした利点も生かして需要の拡大に的確に帝王すべく早急に増産体制を整えるようにしたい。現地の行政当局からも早期の増設を要望されている。2010年末もしくは2011年中には年産80万トンもしくは100万トン能力の第2号機を完成させたい。このため早ければ08年末には着工したいと考えている」。

《冨澤龍一・三菱化学社長》
「中国、韓国、東南アジア、インドといった成長するアジア市場でどういった事業戦略を展開していくかは三菱化学に取ってもこれからの経営の最重要ポイントの一つだ。これらの地域では世界の名プレイヤーが激しい生存競争を繰り広げており、特に中国市場はその中でも最大の激戦地となっている。こうした中を勝ち抜いていくには持てる力の全てを投入していく必要があるが、さいわい三菱化学はPTAに関する高度な技術力と豊富な市場開拓経験を有している。こうした強みをフルに生かしてフェアな競争を勝ち抜いていきたいし、またその自信も十分持っている。今回のPTA事業のスタートには約400億円という巨額の資金を投入したが、これも中国に対する我々の期待の大きさの表れと理解していただきたい」。

《小林栄三・伊藤忠商事社長》
「当社の重要戦略の一つは、今後の成長が期待できる製品を国際的な成長地域で思い切って育成していくことにある。今回の寧波三菱化学のPTA事業への投資は、そうした基本戦略の狙いぴったり合致するものと判断して実行に踏み切った。最近の当社全体の投資案件の中でも非常に重要なプロジェクトの一つということになる。中国では、今後もポリエステル繊維をはじめとしたPTA関連産業が大きく成長・発展していくのは確実と予想されている。当社としては、持てる経営資源の総力を投入してそうした中国国内のPTA関連産業の発展に大きく貢献することで合弁パ−トナーの責務をきちんと果たすようにしていきたい。

《石橋武・三菱商事副社長》
「ポリエステル原料事業は、三菱商事に取っても極めて重要なビジネスの一つとなっている。当社ではかねてから、優れた技術を保有している三菱化学さんと緊密に連携しながらPTA事業の国際展開に積極的に取り組んできたが、中国におけるPTAの需要が今後もさらに大きく伸びるのが確実となってきたことから今回のプロジェクトにも参加することにした。当社に取っても大変大きな意味を持つプロジェクトであり、したがって狙い通りの成果をいち早く上げられるよう努力していきたい」。