2001年06月22日
三井化学、「エボリュー」のアジア市場開拓に本腰
専門の技術サービスチームを編成、マーケットを巡回
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:住友化学、三井化学

 三井化学は、メタロセン触媒による気相法直鎖状低密度ポリエチレン(商品名・エボリュー)のアジア・パシフィック市場の開拓に本格的な取り組みを始めた。

 最も力を入れているのは、同地域全体の需要家に対するきめ細かい技術サービス活動の展開。その目的は「多くの需要家にエボリュー特有の品質・機能をフルに生かした事業を効率よく進めていってもらうようにすることにある」(小林加昌・同社ポリエチレン事業部部長、末永寿彦・同事業部部長)という。高分子研究所から同樹脂専門の技術サービスチームを派遣、各地の需要家の間を巡回訪問し始めている。

 同社がアジア地域の市場開拓に本格的に取り組むんでいくことにしたのは、「日本以外のアジア・パシフィック諸国でもエボリューの品質・機能を生かせるマーケットが十分確保していける見通しが立ったから」(両部長)という。

 エボリューは、コモノマーにハイヤー・アルファーオレフィン(HAO)の一つであるヘキセン1を使った新タイプのポリオレフィン。フィッシュアイの少ない製品が作れること、成形性に優れること、対衝撃性と剛性(腰の強さ)を兼ね備えた包装材等が得られること、品質が安定していること--などが大きな特徴とされる。

 このうちの成形性に関しては、高速成形性が最大の強みという。その速度は製品の厚みによって異なるが、例えばキャストフィルムでは、従来のHAO・L-LDPEが毎分200メートルであったのに対してそれを50%方上回る300メートルが可能となり、また、インフレーションフィルムでは、従来品の同40メートルが2倍以上の同100メートルへと大幅に改善できるという。

 このため、企業化当初からシーラントを中心とした高機能包装材市場での人気が特に高い。国内の同分野では圧倒的なシェアを確保している。また、対衝撃性と剛性をあわせ持つため、重袋分野でも急速に市場が広がりつつあるという。

 同社では、こうした強みをフルに生かして中国をはじめとしたアジア・パシフィック市場でも安定基盤を確保していくことにしている。特にシーラント分野に強力な地盤を築いていきたい考えだ。現在、アジア・パシフィック地域のシーラント市場の多くはダウケミカルが占有している。一昨年秋にタイに建設した溶液重合法の年産30万トンプラントで汎用品種に加えてオクテン1をコモノマーとするHAOグレードも製造・販売し、先発企業の優位性をキープしている。

 三井化学の当面の目標は、このシーラント分野でダウに追いつくことにあるという。需要は中国のほか、豪州、ニュージランド、アセアン諸国でもこれから急速に拡大すると判断している。このため2005年には、住友化学工業との統合企業の手でシンガポールに年産20万トンなり30万トンなりの大型設備を建設するというのが現在の基本プランという。